みーる
@Lt0616pv
2026年2月10日
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
アンディ・ウィアー,
小野田和子
買った
読み終わった
登場人物はほぼグレース博士1人。何もわからないゼロの状況からよくもまあここまで風呂敷を広げたものだと感心する。
アストロファージと呼ばれる高エネルギー物質が太陽のエネルギーを吸収することで地球の温度が低下、何十年後かに人類は滅びる。しかし、タウ・セチと呼ばれる惑星だけはアストロファージの影響を受けていない。その理由を突き止め地球を救うためにプロジェクトヘイルメアリーに乗って宇宙を探索する話。
設定もわかりやすく、アストロファージやタウ・セチなどSFらしいワクワクさせる要素も数多い。
登場人物のグレース博士は科学教師だった。宇宙に1人(そのうちクルーは2人とも死んでいる)でも科学の力を使って現状を打開していく。この状況下でもどこか楽しそうなグレース博士を見ているとページを捲る手が止まらない。プロジェクトヘイルメアリーの責任者ストラットも魅力的だ。なぜだか世界中のさまざまな権限を与えられている彼女。ドライでクールな印象を受けるが、プロジェクトヘイルメアリーが宇宙へ行った後のことは考えていない。「投獄されるでしょうね」とさらりと答える場面では彼女が地球全体のことを自分ごととして捉えていることがわかる。そこまで頑張れるストラットは報われてほしいな。登場人物ははぼその2人そしてロッキー。
展開においてキーとなるのはエリディアン(地球外生命体)と出逢う場面。実は地球外生命体などいなくてグレースとは別の人が任務が遂行されていたのであった…と予想したが、見事に外れ。正直、地球外生命体の描き方でこの作品がチープなものになるかどうかが決まると思っていた。ロッキーの描き方は非常に丁寧で、記号としての宇宙人ではなく、人型ですらない。考えてみればむしろロッキーのようなカニっぽい姿はリアルな気すらしてくる。そしてロッキーと科学を通して意思統一をゆっくりと丁寧に図ろうとする描写は、ヒックとドラゴンのようなこの先の友情を予感させるものだった。
ここまで上巻だけだがめちゃくちゃおもしろい。なぜアストロファージが現れたのか、地球はどうなるのかまで描いてほしい下巻だが、ロッキーとの友情をテーマ中心に描く気もしている。いやむしろアストロファージがどうこうは野暮なら気もする。グレース博士が科学の力を駆使して1人で考え決断する過程が丁寧に描かれていればそれで満足である。
抱えている問題のスケールそのものは大きいが
グレース博士の明るい性格やロッキーの可愛らしさでそこまで深刻さがないのが逆に魅力的。
ジャンル小説の枠で考えるとSF小説の特徴として「物的描写をきっちり描く」がある気がする。読者と「状況の共有」が最優先で名詞が多くなりがち。故に登場人物の心情は省かれがちになる。読者からすれば「丁寧に説明されているはずの説明がわからない状態」SF小説が苦手な人が多いのも頷ける。「プロジェクトヘイルメアリー」も同様に科学的なことを説明するためにかなりの分量を費やす。しかし、グレース博士のひとりごとのような描写が随所に差し込まれるため読み疲れしない。純粋な物語上のおもしろさに加え、読者目線で読み疲れさせない工夫も凝らしてあるように感じる(これは翻訳の小野田さんがすごいのか)
そんなこんなで、いよいよ下巻。ここまではめちゃくちゃおもしろいが良作と行った印象。
さてさてどうなるか。