ピエ "ロサリオの鋏" 2026年2月4日

ピエ
ピエ
@pie_202
2026年2月4日
ロサリオの鋏
ロサリオの鋏
ホルヘ・フランコ,
田村さと子
1980年代のコロンビア第二の都市メデジンを舞台とする、麻薬カルテルの女殺し屋ロサリオ・ティへーラスの物語。コロンビアでは『百年の孤独』と並ぶベストセラー小説だそうで、映画やドラマにもなった。私はメデジン出身のJuanesが本作をオマージュした楽曲"Rosario Tijeras"が好きで、それをきっかけに読んだ。 冒頭、ロサリオは撃たれて病院に運び込まれ、死にかけている。ロサリオに片想いする「俺」が、病院の待合室で夜を明かしながら、出会いから現在までの彼女の人生を回想していく。 スラムに住むシングルマザーの家に生まれたロサリオは、仕立屋である母の鋏を使い、自分を強姦した男に復讐したことから、ロサリオ・ティへーラスと呼ばれている(tijerasは鋏の意)。殺し屋になったことで金を手に入れたロサリオは、上流階級出身の「俺」とその親友エミリオに出会い、エミリオの恋人として3人でつるむようになる。 女殺し屋というと冷酷な女を想像したが、ロサリオは感情の起伏が激しく、兄や仲間の死に激しいショックを受け、人を殺した後は罪悪感から過食して著しく太る。彼女を殺し屋にしたのは、麻薬カルテルの牛耳る暴力と、固定化された階級と、女性を踏み躙るマチズモであることを、痛々しいほどに感じた。 邦題『ロサリオの鋏』について、Tijerasは二つ名なのだから寧ろ「鋏のロサリオ」ではないかと疑問を覚えながら読んでいたが、本編最後の2ページで腑に落ちた。「鋏」は、周りを傷つけながら、何より自分が傷つきながら生きるしかない彼女自身の象徴なのかもしれないと思う。 最後に、この話の舞台は前世紀であり、現在のメデジンとは全く状況が異なるという点には留意したい。コロンビアに染み付いた麻薬と暴力のイメージが再生産され続けることは本意ではないので。
ピエ
ピエ
@pie_202
…いので。
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