DN/HP "ダ・フォース 上" 2026年2月14日

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2026年2月14日
ダ・フォース 上
ダ・フォース 上
ドン・ウィンズロウ,
田口俊樹
「一本の通りを歩いているだけで五つの言語が聞こえ、六つの文化のにおいが漂い、七つの音楽が聞こえ、百もの人種とすれちがい、千もの物語が存在する。そのすべてがニューヨークだ。」 「そうしておまえは略奪者になった。純然たる犯罪者に。それでも自分は犯罪者じゃないと自分に言い聞かせた。奪う相手は銀行ではなく、ヤクの売人なんだから。ヤクを奪うのに人を殺したことはないんだから、と。」 上巻はニューヨーク、マンハッタン、その街、“City”の話。街の名所やそこにあるカルチャー、ヒーロー刑事、あるいは貧富の差や人種差別、ドラッグ、そして警察、市政の汚職。綺麗な部分も汚れてみえる部分もどちらも詳細に書き込まれ立ち上がってくる街の物語。 下巻はその街に魅せられ同時に捉われてもいるヒーロー刑事、汚職刑事、“City”の“King”が一線を超えていたことに気付かされ、自らが嫌悪していたものにまで落ちていきながらもそれでも這いあがろうと、自らの人生も街の問題も”解決“しようと、もがき這いずり回る、ひとりの男の人生の物語。 というのはザックリし過ぎているけれど、そんな風に読んだ。憧れのニューヨークの街の光景が思い浮かんだ。男のもつ人生のルールに少し憧れた、それを崩してしまうのも人生だ、と哀しくも思った。もう転がり切ったかと思ったところから二転三転する展開に興奮した。ドライヴしながらも繊細に細やかに掬い上げていく文章、文体、翻訳も素晴らしかった。めちゃくちゃ面白かった。 そして読み終わった後には、これは「正義」に関する物語だったのかもしれない、と思っていた。「正義」もそれを果たすためのやり方もそれぞれにある。絶妙なバランスで成り立っていたそれらが崩れたとき、街も人生も同時に崩壊に向かっていく、という風にも読めた気がする。 現実もそんな風に成り立っていたり崩れたりしているとも思うけれど、正義とは個人や個別にそれぞれあるものではなく、もっと大きく広く受け入れられるべき、公共とも言えるようなものなのでは、と悪意と私欲としか言えないものを“正義”として堂々と語る人をみたときに考えたことがあったのも思い出した。 「正義の女神はどうして眼隠ししていると思う?法廷で起こることを見ていられないからだ」 その公共みたいな考えは、この小説でもおそらく「正義」と訳されている「Justice」という単語が公正という意味を多分に含んでいるということを考えると、あながち間違ってないのではないかと思えるのだった。全ての人に「公正」な「正義」は、もしかしたらないのかもしれないけれど、それでもわたしは悪意や私利私欲をそれぞれの「正義」とは呼びたくないな、と改めて思ったのだった。 - 「ナズの『N.Y.ステイト・オブ・マインド』が気分を盛り上げてくれる。 おれは眠らない、睡眠は死のいとこだから 知性の壁を越えた先で人生は決まる ニューヨークの気分になるとき、おれは犯罪のことを考える」 わたしも行ったことのないニューヨークの気分になって盛り上がりたいので、久しぶりに「Illmatic」を再生するのでした。あとでBIG Lの「ifestylez Ov Da Poor And Dangerous」も聴こう。 しかし、スタテンアイランド出身のアイリッシュの刑事がラップ・ミュージックが好き、というのもニューヨークな話な気がして最高でしたね
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