ヤングオイスター飼育員 "十二人の手紙 (中公文庫 A..." 2026年2月10日

十二人の手紙 (中公文庫 A 76-3)
久々に一気読みしてしまった、単純に文章が上手いからだろう(当たり前だ!) それにしてもミステリとしても一級品だった 手紙で全てが構成された本なのですが、 中には公的書類や礼状だけで構成したものもあり、 形式的内容だけでもその裏にある誰かの人生を想像することができるんだと感心した 本書の内容からはずれるが、井上ひさしは、構成によって「描いてないことを描いてしまう」のがうまいと思う たとえば戯曲『紙屋町さくらホテル』は原爆投下前と後のシーンしかなく、いわゆる『はだしのゲン』に描かれるような原爆のシーンは一切ない (これは舞台上で上演する以上、比喩を使う以外に描くことが最初から難しいのだが) だが、描かれていないことによっても原爆の悲惨さがわかる構造になっている また、「描かれてない間に登場人物たちに何があったか」を観客が当然知っているものとして、作家が信頼しているからこそ描いていない、描く必要がないともいえる 多層的な意味で「生きている人間」を見ている作家だなという気持ちに改めてなった 本書でその構造が楽しめるのはやはり第3話の『赤い手』だろう 劇評家の扇田昭彦の解説も大変素晴らしかった
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