
紫嶋
@09sjm
2026年2月21日

読み終わった
借りてきた
「ゆる民俗学ラジオ」にて紹介されていたのを聴き、内容に非常に興味が湧いたため読んでみた。
ダム建設により閉村した山村「三面村」における人々の暮らしを、フィールドワークとして実際に現地に住み込んだ著者がまとめあげた記録。
単なる表面的、物理的な調査に留まらず、村人との交流を通して山で暮らす人々の世界観や精神性にまで深く踏み込んだ内容となっている。
三面に限らず、かつて日本の各地に存在したであろう山での暮らしのあり方、日本人と山(自然)との向き合い方をそこから透かし見ることができる気がした。
調査研究の記録というと堅苦しいイメージもあるが、この本は良い意味でどこかエッセイのようでもあり、四季に移ろう山の情景の描写や、村民の方言混じりの素直な言葉からは、文学的な味わいすら感じられる。
それらを記録に留めようとした著者の感性の豊かさのなせる技か。それとも、そうした情緒に訴えかけるものを、山は強く放っているのかもしれない。
また、この本は山の暮らしの記録であると同時に、「ダム開発により失われることが確定した村の最後の記録」でもある。
失われたのは三面村という地図上の名前だけでなく、そこで暮らしてきた人々の何百年にもわたる営みや文化、知恵、技術、精神でもあるのだと、この本を通してその重みを思い知らされた。
一度失われれば二度と取り戻すことはできないもの。時代の流れとはいえ、失われたものはあまりに大きすぎるように思う。
本書の終盤、閉村を受けて村人が語った言葉が、胸に刺さった。