アツシ "独裁者の倒し方" 2026年2月23日

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2026年2月23日
独裁者の倒し方
独裁者の倒し方
マーセル・ディルサス,
柴田裕之
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独裁者が自発的に引退するのは信じ難いほど危険 たいていの独裁はそのようなリスクをあえて冒したがらないので、権力の座に留まろうとする 独裁者は裕福さや権力を求めてランニングマシン(比喩)に乗る しばらくはうまくいき、高齢や疲弊で一部の権力譲渡をしてマシンを降りる 現実には、少しばかり譲るのはうまくいかない 少し与えれば、全てを失うリスクが生まれる 独裁者が一旦権力の座を離れれば、法律や肩書きや評議会での地位など、何の意味も持たない 唯一重要なのは独裁者の後継者が、自らの権力拡張のために前任者の権力を奪い始めるほど強力か否か、だ 民主化によってランニングマシンのスイッチを切ることはハードルが高い 主な理由は独裁者の周りのエリートの関心にある エリートは政権の存続が損得にかかっている また、軍が民主化に反対していると、事はいっそう困難になる 独裁政権によって裕福になる機会に恵まれた軍は、独裁者に仕えて金持ちになる方が、民主的な指導者に仕えて今より貧しくなるよりもいいと思っているかも知れない 民主化が成立すれば、それまで独裁体制に仕えてきた軍人たち自身も責任を問われる可能性が高まる さらに、新しい指導者には、軍に敵対する行動をとる強い動機がある なぜなら、従来の特権を失うことを恐れる軍が敵対する可能性が高いからだ 対して軍は先手を打ちたがる 民主的な指導者は、就任後真っ先に治安部門の改革に取り掛かることが多いからだ 新しい指導者は、独裁体制を守ってきた保守的な軍を信用しない
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ランニングマシンを降りる選択肢に亡命がある しかし、この選択は魅力的だから選ばれるのではなく、他に選択肢がないから選ばれる ほとんど独裁者が政治権力に興味がなくなったのではなく、追い出されて亡命する場合がほとんどだ 国外亡命した独裁者の84%が「クーデターか叛乱か内戦の最中、つまり報復を受けるリスクがあるときに亡命した」という 独裁者の亡命先として独裁政権の国の方が望ましい └独裁政権は国民の要求から隔絶されている └政策を抜本的に転換する可能性が長期にわたってかなり低い 過去数十年間に、安全な亡命先を見つける事は難しくなった 国際刑事裁判所(ICC)と、それに関連した国際司法発展のせいだ 2018年の調査結果によると、亡命は大きく変わった 残虐行為を指導者とそうでない指導者の亡命確率はほぼ同じだった それが今では、最悪の部類の人間に「黄金のパラシュート」を提供することを各国がためらい、残虐行為に関わった指導者は「亡命という選択をする可能性が役6分の1」しかいない
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独裁者のためのハンドブックによると、独裁者の周りに3つのグループがある ①理論上大切な人々 └指導者が権力を掌握するために表向きは味方につけなければいけないことになってるグループ 特定の指導者(独裁者であろうとなかろうと)が権力の座に留まり続けられるかに関して、ある程度の発言権を持つ 名目上は「選挙母体」 ②実際に大切な人々 └指導者が権力を掌握するために必要なグループ 「真の選挙母体」 誰が権力の座にとどまるかを実際に決める人々からなる ③中核を成す人々 └独裁政権が彼ら抜きでは支配できない最小のグループ 「勝利連合」 真の選挙母体から集める必要のある、ごく少数に人からなる このグループの支持を維持できれば権力の座にとどまり、失えば権力のも失う これら3つのグループの規模は統治体制によって大きく異なる 政権が独裁的であるほど、3つのグループは小さくなる傾向
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エリートは独裁者の支配に黙従するだけでなく、混迷の時期は支えにもなる だが、真の選挙母体のうちかなりの割合が、自らの権力獲得あるいは別指導者の下での利益増大を狙って、独裁者の失脚を望んでいる筋書きの可能性を独裁者は恐れている 「必要とされる後援者が少人数で、潜在的支持者の大きなプールから彼らを選べる時、独裁者は連合の忠誠を買うために政権の歳入の大きな割合を費やす必要はない」 そうした状況下では、独裁者に対するエリートの忠誠心の値段は低い クーデターを起こした指導者の立場に立つと、人事刷新は難しい 兵士は大勢いても大佐の数は限られている 二等兵には、新政権を率いる助力になる経験も能力もない 民主国家では有権者は替えが利くが、独裁政権では、真の選挙母体を構成するエリートの供給量は有限だ 独裁者は自分に逆らうようになった人間を、いつも誰かと交代させられるわけではない だから支配者はエリートを味方につけておく必要があり、苛立たしくともエリートたちに支出しないという選択肢は現実には存在しない
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独裁者は技能労働に頼らない富の源泉へのアクセスを望む もしその源泉が技能労働に頼る場合、独裁者は大勢の人の好意に依存することになる お金を生み出す仕組みが技能労働頼みだと、人々を教育するためのお金が必要になる これまで世界でも際立って不道徳な政権の多くが、石油や天然ガス、ダイヤモンドの産出国に見られるのは偶然ではない 天然資源の採掘は指導者の周りのほぼ全員が無能であってさえやってのけられる 独裁者は油田を外国の大手石油企業に売却しさえすれば、あとの掘削・精製・輸送作業はやってもらえる 石油と独裁体制はじつに相性が良い
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独裁者を囲むエリートたちは権謀術数に長けているが、兵士たちは一瞬のうちに独裁者を倒す腕前を持っている 国外からの脅威や反政府勢力から政権を守るには強力な軍隊が必要 しかし、軍隊に力を与えると将兵が強くなり過ぎて倒されてしまうかもしれない クーデターのメカニズムは3つのグループがかかわる ①実行する人々 └権力を掌握する・不正を正す・富を得る、いずれかの理由で立ち上がる ②企画者の対極にいる独裁者とその側近 └彼らは権力の座にとどることを望んでいる ③政治団体や派閥と結びつきのない軍人たち └適切な側につけば、キングメーカーになるが、どちらの側が本当に強いのか見えず、何もしないのが1番の安全策であることが多い だからこそどくさにとって、強く見えることが重要 印象は現実に勝るだけでなく、現実そのものになる
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軍事クーデターはエリートほど腐敗の恩恵を受けていない、ずっと下位の軍人たちによって も起こりえる。実に多くのクーデターは、 階級の低い軍人(大尉以下)によって実行されることがわかった。 そして、そのようなクーデターの成功率は低く、 中間層によるクーデターが48%であるのに対し、 上層によるクーデターは68%。 それでも3分の1近くが成功している。 政権にクーデター防止策を施すには主に3つの方法がある。 軍を分割すること 内部の信頼関係を弱めること 人員を適切に配置すること 今や正規軍に加えて、併設軍や軍隊化した独裁者の護衛部隊などが存在する。政権が軍を分割しておけば、各部分が互いに牽制している。 同じことが諜報機関にも当てはまる。単独の諜報機関に国内の脅威を監視させる代わりに、その機関を3つに分け、それぞれに別個の任務を与える一方で、 任務の一部を重複させる。 そうすれば、各機関が互いに監視し合い、捜査官たちが陰で政権の転覆を企むのがはるかに難しくなる
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政治学者のジェームズ・クィンリヴァンはその仕組みをかいつまんで以下のように的確に並べている。 併設軍は正規軍ほどの規模を持たなくても構わないし、本格的な内戦で正規軍を打ち破ることができる必要もない。 だが、政権の要衝の直近で裏切りを働く勢力があれば立ち向かい、場合によってはそれを打ち破るのに十分な規模で、十分忠実で、適切に配置されていなければならない。 理論上はそうなる。 では、実情はどうだろう? フセイン政権の共和国防衛隊は、政権を守ることを念頭に編成された小規模な組織として始まった。 一方で、人民動員隊は市民軍として成立し、最高の訓練を受けるわけでもなく、最高の武器を与えられるわけでもないが数は多かった。 治安部隊のそれぞれの小部門は、フセイン打倒を企てることがあれば、この独裁者だけでなく、他の部門とも関わらなければならない可能性を考慮に入れざるを得なかった。 政権にクーデター防止策を施すのに独裁者が使える第二の方法に進もう。 将軍同士や将軍たちと兵士たちとの間の信頼を弱めるという手だ。 独裁者は国防大臣と内務大臣と諜報機関のトップが長時間一緒に過ごすことを断じて望まない。もしそれを許せば、3人は腹を探り合った後、計画を練り始めかねない。 彼らを予め分断し、互いに疑い合い、独裁者の注意を引くために競いあわせるのが、独裁者にとって1番好都合だ。
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独立後の多くの指導者たちが追い求めた解決策の1つは治安部隊の民族化だった。 民族化した部隊は民族的なアイデンティティを持っているので、現行の体制下にいる方が有利だった。 もし彼らを採用してくれた指導者が失脚したら、彼らも与えられた特権を失いかねない。 そのような事態を望む人がいるだろうか? 独裁者はほとんどいないと見ている。 民族化を行わなかった指導者は、平均で6年ほどの権力の座にとどまった。 民族に基づく準軍事部隊を創設して自らを管理する指導者はその2倍以上の期間その座に留まった もしクーデター防止策がクーデターを避ける鍵なら、なぜ誰もが権力を手中に収めたら さっさと軍と諜報機関を再編しないのか? エリカ・デ・ブルーインが著書「クーデターの防ぎ方」で明らかにしているように、問題の1つはそのプロセス自体に由来する。 クーデター防止策を施した軍は政権の存続の可能性を高めるが、独裁者がそのプロセスを開始し、 やり終えるまでは独裁者の置かれた状況は危うい。
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反乱勢力の資金源となるダイヤモンド 反政府組織にとって厄介なのは、彼らの活動は直接収益を生み出さないが、 行動を維持するために支出が多いからだ。では、反政府勢力は独裁者を打倒するのに必要な資金をどうやって手に入れるか? 反乱者たちの強みの1つは、暴力に訴える力だ。とはいえ選択肢は他にもある。 その一つは天然資源だ。資金を調達しようとしてる人にとってダイヤモンドは最高だ。 採掘が楽なことが多く、密輸も簡単で、一旦紛争地帯から運び出してしまえば途方もなく高価だ。 アフリカの紛争地帯からのダイヤモンドは、1990年代半ばには、世界の供給量の15%を占めていた
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3.5%ルールというものが存在する。 エリカ・チェノウェスによれば、戦闘や一般大衆によるデモ、その他の大規模な非協力的行動のような観察可能な突出した出来事に、 国民の3.5%が積極的に参加した時、失敗した革命は一つもない、という。 1945年から2014年に389件の抵抗運動のうち、3.5%という境目を超えたものは18件しかなかった。 だからそれは比較的稀ではあるが、現にその境界を超えると政権にとって致命的になり得る。 独裁者の支配に耐えるように、あるいはそれを支持するように人々を説得する方法の1つは、 独裁体制が他の人々には支持されているという錯覚を抱かせることだ。 選挙は無意味であるのが明白であるのにもかかわらず、なぜ非民主的な国々は多額の資金を選挙に投じるのか 不思議に思ったことはないだろうか。 それは選挙に勝つのは政権が民衆の支持を得ていることを自国民と諸外国に実証する方法だからだ。 明らかな嘘を国民に信じ込ませる古典的な手法は、彼らが目を覚ましている間中、プロパガンダを浴びさせ続けることだ。
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独裁者は、自国民に向けて発砲するかどうかを決める必要がある時点に至った時には、すでに多くのミスを犯している。 自国民に銃を向けるような残虐行為によって、政権がすぐさま崩壊しなくても、そうした行為は、その後ずっと敵対者たちが蜂起する起点となり得る。 だから中国共産党は、天安門で何が実際に起こったかはもとより、あの大虐殺の日付を反体制派が口にすることさえ恐れている。あの出来事は決して葬りさることができず、中国共産党の汚点として永遠に残るだろう。 民衆の抗議運動はほぼすべての独裁者にとって常に脅威だ。 行動を起こす必要があるが、発砲するよう命じることは大抵できない。 なぜなら、命令通りに発砲する人が十分な数だけいなければ、銃は役に立たないからだ。 そしてほとんどの独裁者にはそれだけの人がいない。だから彼らは銃を使おうとした瞬間に権力を失いがちだ。 ボディガードに裏切られる可能性は現代の支配者にとって絶えず脅威になっている。 そのため、外国人を雇う指導者もいる。なぜなら国内政治にそれほど関心がないし、政権を運営するのに必要とされる正当性も持ち合わせていないから。 1950年から2012年に倒れた独裁的な指導者のうち、わずか20%の後にしか民主主義は到来しなかった。 最悪の場合、独裁者が倒れると別の独裁者が現れるだけでなく、暴力的な争いと混乱状態につながる。 独裁者が席を追われると一般大衆の利益は政権内の保守派や挑戦者たちの利益とは真っ向から対立することになる。一般大衆は権力とお金が政権内ではなく政権から国民へと再分配されることを望む。 これを達成する最善の方法は民主化だ。妥協点を見出すのはほぼ不可能で、そこには重大な利害が絡んでいる。このような状況下では、実力行使によって優位に立てると考えている陣営があれば、必ず実力行使をする誘惑にかられる。 すると、舞台裏の争いがたちまち現実の世界での銃火にかわりうる。そうなったら一般大衆は敗れることが多い。なぜなら実力行使に関しては彼らに優位性はないからだ。 原則として政権は個人化されているほど独裁者の失脚は大きな混乱をもたらす。 体制が単一の指導者を中心に回っていると、その人物が取り除かれれば体制全体が簡単に停止しかねない。それと対照的なのが一党独裁体制であり、この種の体制には継承の仕組みが組み込まれている。
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王にとってより望ましく、次第に多くの君主制国家が移行していった制度は、長子相続制だ。この制度の下では、王位を継承するのは君主の長男であり、弟ではない。 皇太子と王の年齢差は大抵大きく、皇太子は自分の方が長生きする自信があるので、父親の死まで忠実であり続ける余裕がある。 だがそうであるなら、年齢差を最大にするために、なぜ長子ではなく末子に王座を受け継がせないのか? この制度は末子相続制と呼ばれるが、体制を働かせ続けるエリートたちと関連した大きな欠点が一つある。 自分自身の権力基盤をじっくりと築く時間のある長子とは違い、末息子は王座に就いた後、エリートたちに報いることができるという保証がない。 在職中に亡くなった79人の独裁者を調べた研究によると、彼らの死後、政権の崩壊に つながった事例はわずか8%しかなかった。 そして 民主体制に取って代わられることはほとんどない。 在職中に亡くなる独裁者は普通、彼らの統治期間にそれなりの数の脅威を回避してきた。 だから彼らが黄金のベッドで最後の眠りにつくとき、政権は崩壊しそうにない。なぜなら国の体制はしっかりと根付いており、指導者の交代の準備ができているからだ。 指導者が就寝中に死ぬのを許されるのは、エリートたちが後継者についてすでに強引に立っている場合に限られる。 もし合意がなかったら、指導者の存命中に反旗を翻して優位に立とうとするだろう。
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政治では独裁者を倒すことほど難しい課題はほとんどないが、全ての試みが失敗を運命づけられているわけではない。 それがどれほど困難かを踏まえると、外国勢力は現実的にどんな影響力を振る舞えるのか? 良くも悪くも外部の影響は限られていることが多い。 独裁者の打倒は主に国民にかかっている。それも国民のごく一部に。原則として独裁者に近い人ほど影響力が多い。 惨事を引き起こさずに独裁者を倒すには、独裁政治のサイクルを断ち切らなくてはならない。そのための方法は主に2つ。 第1は独裁者の基盤を少しずつ削り取り、時間をかけて弱める。強風が吹いただけで独裁者が倒れるようにするように。 第2の戦略はもっと即座のもので、独裁者を直接排除することを狙う。 独裁者は権力の座にとどまるために、資金と武器と人が必要だ。 外国勢力はそれら3つの全てに影響を及ぼすことができる。 外国勢力は独裁者の打倒に貢献したければその独裁者を弱体化し、取って代わり得るエリートを強化し、 一般大衆に力を与えることを目指すべきだ。 最初の2つは独裁者の失脚の可能性を高め、 最後の1つは独裁者政治のサイクルを断ち切る可能性を増す。
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