
DN/HP
@DN_HP
2024年12月31日

神は銃弾
ボストン・テラン,
田口俊樹
かつて読んだ
また読みたい
心に残る一節
初期(「音もなく少女は」まで)のボストン・テランの小説でわたしが読みたいのは、繊細で美しく複雑で荒々しい、とにかくカッコいい文章とそこに幾重にも厚くかけられる比喩のベール。シンプルなストーリーの上で語られる窮地に陥り人生を解決しようとする人々それぞれにある、こだわり、理、世界をどう観ているかの視点。そして、女性が、虐げられたものが、自らの手で独立を、尊厳を取り戻す物語だ。
「そう、神は白人で、男なんだよ。だけど、あたしの意見を言えば、それこそ、そもそもの罪だ。それでもう先例ができちまったんだから。神性ー完璧ーは男だって言っちまったんだから。それこそ息子に引き継がれるべき白人の文化で、だから、それ以外の人間は誰でも、それ以外のものは何もかも、それよりひとつ劣るんだよ。女も、黒人も、インディアンも、動物も、ゲイも」
故にボストン・テランは女性の、虐げられたものの新しい”神話“を書くのだ。24年の最後の日に、1stを再読してそんなことを言い切りたくなったのでした。
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ボストン・テランの文章は集中していないと置いていかれてしまいそうになるけれど、それでもとてもカッコ良い。付箋も立つ。引用というか、書き残しておきたくもなってしまうのでした。
「見なよ。これこそ完全な命の形だ。至高の芸術形式だ。誰にも平等な偉大なるものさ。これは政治の境界も宗教の境界も全部越える。これはなんのしがらみもない。だから、誰もえこひいきしたりしない。向こうもこっちもどっちにも傷を負わせる。これは、ゴミみたいに偉ぶったたわごとを並べて、聖書が撒き散らすくそ寓話のどれにも負けないくらい単純で深いものだ。これはその背に歴史を背負って、眼のまえにあるものをすべて薙ぎ倒す。信仰はすべてこの処女真鍮の莢の中にあるんだよ。これこそ処女交降誕なんだよ、ベイビー。そうとも。これこそ新しい宗教を生み、古い宗教をやっつけるものだ。コヨーテ、神はいるよ。だから、不幸や苦痛なんか、にっこり笑って耐えるんだね」
「ホーナデイ社の弾丸を手に彼女が語った、真実の世界で完全な力を維持しているものに関する二分間の哲学。」
神は銃弾。
