
あんどん書房
@andn
2026年2月26日

芥川賞候補作全部読んで予想・分析してみました: 第163回~172回
マライ・メントライン,
杉江松恋
読み終わった
ここ数年なんとなく追っている芥川賞。候補作をいくつか読んだり受賞作を読んだりしてみるけれど、結局芥川賞って何なんだ…? というのが知りたくて読んだ。
とりあえず分かったのは
・文学実験は評価される
・エンタメ性は評価されない
・平野啓一郎にぶった斬られ、山田詠美にぶん殴られがちな選評
という感じ。
自分が芥川賞を追い始めたのが『ハンチバック』やら『東京都同情塔』といった社会的テーマと強く結びつく作品が並んでいた時期だったのでそういう傾向かと思っていたが、「実験性」のほうはまだちゃんと理解できてないなと思った。(だから『サンショウウオの四十九日』などはピンときていなかったり)
そもそもそれ以前に本書の対談と選評コメントの総括を読んでいると、自分の読みなんてカスやという現実がよく分かってごめんなさいという気持ちになる。なんちゃって予想はもうしません…(獲ってほしい、とは言うけど)。
しかし『ハンチバック』のインパクトが大きかったことは間違いないらしく、ここからまた潮流が変わるのではないかという指摘も。
“芥川賞ではしばらくテーマとそれを書く側の当事者性問題について敏感であった時期がありました。それが「ハンチバック」(第一六九回芥川賞候補作)の受賞によっていったん収束したように見えます”(P233)
“主流文芸でもこれからは、「目をそらすわけにはいかない社会的テーマにどう寄り添うか」よりも、「お前の脳にはいったい何が見えているのか」という、知覚と認識の本質がよりシビアに問われていくような気がします”(P126)
当事者性の極致みたいな作品でありつつ、選考ではあくまで小説的技術を評価したというのが全面に押し出されたことによって、当事者性が全てではないという流れになったということかな。こういうのは長年追い続けていないと分からないので、ためになる。
乗代さんの続きものがノミネートされて不利になっちゃう感じとかどうなのかなぁと思うけど、でも作家も出版社も文芸誌に未受賞作家の中編を載せるってことはある程度芥川意識してるものなのかな。
本文書体:リュウミンオールド、見出し:A1ゴシック
カバーデザイン:荒木香樹
カバーイラスト:フクイヒロシ

