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きづ
きづ
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  • 2026年5月18日
    だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語
    緩和ケアの現場から、2人の末期癌、安楽死希望患者を通して、著者が安楽死について考えていく内容。 著者は本の中で、一貫して安楽死反対の意志を持ち続けているが、患者の思想や希望には可能な限り全力で耳を傾け、医者としての自分と患者の間にある落とし所を探していた。 30代で安楽死を希望していたユカ氏は、「耐え難い苦痛」を迎えた時に、鎮静剤によって眠りにつかせて欲しいと話し続けているところが印象的であった。 患者にとっての「耐え難い苦痛」は、医療従事者達が客観的に判断出来る基準を持っておらず、明確な線引きのないまま鎮静剤の投与を承諾することは、医師による自殺幇助との違いが曖昧になってしまうことなども含め、様々な問題を抱えていた。 かといって、全ての決定権や匙加減を医師側が握っていたままでは、患者は亡くなるまでの猶予として、「耐え難い苦痛」を引き延ばすことになるため、何のための緩和ケアなのかもわからなくなってしまう。 本書では、最終的に患者であるユカ氏の最も辛い日の症状を線引きに、その苦痛が再び訪れた時、鎮静剤によって眠りについていくという条件がお互いの落し所として設置されていた。 彼女は最後まで「安楽死は民主的な選択肢として、賛成」であるという立場を崩す事はなかった。 苦痛の中で、自身の身体の生命維持の判断を他者に握られていることは、個人によっては拷問の様な時間を体験する事に等しく感じるのだろう。 彼女は、彼女自身に限らず、生きていることが耐え難く、苦痛でしかないのであれば、それを安らかに止める権利を人々それぞれが持てることを、人権の一部として考えている。 緩和ケアを訪れた2人の安楽死希望者は、末期癌患者として、安楽死を捉えている立場であったが、実際には病院やケアの現場の外側にある希死念慮なども包括して考えていかなければならないことにも、本書では触れている。 個人的に印象に残ったのは、安楽死を含め死を権利として議論していく中でも、その前提として「生きていたくなくなるような社会」をデザインしないということも、考えていかなければならないという内容。 昭和の時代は人々の繋がりが密接で孤独とは程遠く、安楽死に繋がる苦しみも少なかった。などといった安易な懐古主義に陥ることをも危惧し、現代の日本では、同調圧力や相互監視を除いた、純粋な民衆同士によるケアの環境が存在したことが無いというところから、議論を出発させなくてはならない。 それは例えば実質的な資産カーストによって区分されたローカルなコミュニティからの出発だとしても、前例が必要であると述べていた。 読者個人として、このところよく考えている「個人同士の緩い繋がりの豊富さ」にも通ずる部分が多く読み取れる内容であった。
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