石器時代の経済学 〈新装版〉

石器時代の経済学 〈新装版〉
石器時代の経済学 〈新装版〉
マーシャル・サーリンズ
M.サーリンズ
Marshall Sahlins
山内昶
法政大学出版局
2012年6月8日
9件の記録
  • たすしも
    @taskshimo
    2025年12月30日
  • 読了。多くの研究者による具体的なエピソードの引用からなる補遺の章がもっとも理解しやすく、楽しく読めた。しかしそれはこれまでの理論的で難解な本編を読み通してきたからこそであり、まさに迂遠の有用性とでも言ってよいものを体感する読書となった。 肝心の「パーティー」に関する記述は、たとえば「C 1・5 ルソン・ネグリート族――大量の食物が分与されている。よい獲物があると、いつでも隣人は、御馳走に招待されて、全部たべつくしてしまうのである(Vanoverbergh, 1925, p.409)」(p.375)といった簡潔な記述のみ発見できたが、本編と補遺で何度も繰り返されている未開社会のシステム、つまり「富める者は気前よく分け与える」「それが名誉=権力の証となる」「ゆえに名誉=権力を欲する者ほど多く分与するため結果として所有財産は少なくなる」「しかし立派な者として認識されるため集団内から贈与を受ける」「そうして得た贈与もまた分配される」といった循環機構のようなものを前提にして読むと、リアリティのあるパーティーとして現前にあらわれてくる。 B 5・3 カチン族――「理論上からいうと、だから、上の階級の者は、下の階級の者から、贈与をうけとっている。しかし、このことから、経済的な利益が恒久的に発生しているわけではない。贈与をうけとったものは、誰でも、与え手にたいし債務者(フカ)の位置にたたされるからである……。それゆえ、逆説的なことだが、高位階級の地位にある個人とは、贈与をうけとる人と定義はされるけども……、彼は、うけとったより以上のものを無償譲渡しなければならないという、社会的強制に始終さらされているわけとなる。さもないと、彼は、しみったれだと思われ、しみったれた人は社会的地位を失いかねなくなるのである」(Leach, 1954, p.163)p.368-369 この権力関係が瑕疵のないものであるとは思わないが、社会において権力関係が避けようもなく生じてしまうのであれば、その権力をいかにズラすか、誤魔化すか、活用するか、ということが必要になり、上記のような在り方はその例として好ましいとは言える。次に読むべきは平凡社ライブラリーの『ヌアー族』かもしれない。
  • Blue moon
    Blue moon
    @mimosamimi
    2025年12月26日
  • もうひとつ気になったのは以下の記述。飢饉が長引くとこの理想的な贈与関係にもヒビが入る。そのとき、 スピリアスの伝聞によると、世帯の者たちが、しばしば大いに恐れていたのは、盗みにくるよそ者ではなく、ふつうなら大歓迎され、すきなだけとってもよい、親族の襲来だった、とのことである。(p.384) という状況が生じるのだが、現代社会における排外主義の高まりとはこのようなことなのかもしれない。親族には分け与えなくてはならない。しかしそんな余裕はない。だからこれ以上「親族」とみなすべきと(他者=社会から)要請される存在を増やしたくない。つまり「よそ者」とみなし「盗みにくる」者として非難してよい存在を増やしていくことが、おのれの身を守る術となる。「日本人ファースト」の心理がここにあるのなら、たたかうべき相手はやはり「人」ではなく「状況」だ。状況をひっくり返さなくてはならない。
  • 結局「パーティー」のくだりとおぼしきわかりやすい記述は見当たらないまま本文は読み終える......補遺にあるのだろうか......あるいは別の本なのか、私が読み飛ばした(寝てた)のか......よい読書だ。
  • 相変わらずわかんない話をされ続けているが、「友人が贈与をすれば、贈与が友人をつくるのだ。未開交換のおおかたは、われわれの商取引にくらべると、はるかに決定的にこの後者の機能、つまり、用具的機能をもっている。物財の流れが、社会関係を保全したり、開始したり、するからである」(p.224)は大事な話のような気がする。真ん中の一文は、やはりよくわからないが。用具的機能ってなに!?
  • 第3章で経済理論の話になってきてわからなくなっちゃった。とりあえず読み進める。この章を越えたらたのしくなる気がする。
  • 来年の目標のひとつに「パーティー本屋」の実践があるため、年末にかけての課題図書として本書が選ばれた。
  • 狩猟採集時代の労働は断続的で、いわゆる「ルーティン」のようなものにはなっていなかったらしい。franz ferdinandが歌っていた「It's always better on holiday. That's why we only work when we need the money.」という歌詞そのもののような働き方だ。ルーティンがあることは現代社会では「よきもの」として扱われがちだが、ルーティンは常に規則=支配を生じさせる危険性を伴っている。特に労働は他者から強いられるルーティンとも言え、そこに苦しさが生まれるのは当然なのだろう。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved