オブローモフの夢 (光文社古典新訳文庫)

2件の記録
- CandidE@araxia2025年8月25日読み終わった余計者の系譜として読む。本書は『オブローモフ』の抄訳を収め、巻頭に「オブローモフの夢」を配置する構成となっている。 ーーー 『「オブローモフの夢」は、『オブローモフ』の作品全体の完成に先立つこと十年、一八四九年に発表された。この時点でゴンチャロフはおそらく小説の全体像も凡そのことは思い描いていたものと思われるが、いずれにしても後に小説『オブローモフ』の第一部第九章となる「オブローモフの夢」が、全体からは独立して真っ先に書かれたものであることは、特筆しておく必要がある。↩︎ 著名な作家たちも、『オブローモフ』全体に対する評価が必ずしも高くない場合でさえ、「オブローモフの夢」に対しては絶賛を惜しまない。』 ーー 解説より ーーー 怠惰であり余計者気質でもある私には、身につまされる読書であった。いろいろと思うが、最も心に残ったのは、怠惰で無気力にもかかわらず見捨てられず愛されてしまうオブローモフが、その愛ゆえに主体が空洞化していくこと。そして彼の弱さや悲しみ、儚さは周囲の扶助の対象として価値を帯び、それは彼を中心とした家族のような小さな生態系を回す駆動原理になると同時に、遅行破壊の病理そのものでもあること。これら共依存の不気味さ、やるせなさ、そして倫理としての美しさ。 訳者や出版元の狙いどおり『オブローモフ』の完訳にも手を伸ばしたくなる。が、それを楽しむ心の余裕を、果たして今生で得られるのだろうか。得られる未来を夢見て。
- くらら@kurara2922025年3月11日買った読み終わったオキニ初めて読んだロシア文学。「断崖」が長すぎ&読みにくいということで、ゴンチャロフに手を出しあぐねていた頃にタイミング良く出版されたのでホイホイ買った。 抄訳も面白かったので、この訳者さんの完訳版がほしい。 ないので、全4巻から成る昭和二十二年初版・昭和二十七年第三刷の米川正夫訳を古書で入手した。古い字体であるものの、まあまあ雰囲気に大きな差がないので、やはりオブローモフはそういうヤツ……!