破戒

破戒
破戒
島崎藤村
岩波書店
2002年10月16日
2件の記録
  • mkaizyuu
    @waita256
    2024年12月31日
    私には決して誰にも明かせない人々への負い目がある。それは明らかに丑松の抱えるそれと比較して大したものではない。しかし、これはあくまでも主観的な問題なのである。悩みというのは、悩んだところで到底解決できるものではない。それは、解除されるまで終わらない拷問のようなものである。だから私は、いつも悩みに悩んだ後、決まってそれが如何に馬鹿馬鹿しいことであるかと自らに言い聞かせる。 それによって幾らか気分がマシになることもある。しかし、そういうまやかしは長くは続かないもので、気づけばまた拷問が再開し、終わることのない絶望がやってくるのである。 「これほど深く若い生命を惜しむという気にもならなかったであろう。これほど深く人の世の歓楽を慕いあこがれて、多くの青年が感ずることを二倍にも三倍にもして感ずるような、そんな切なさは知らなかったであろう。」 最近も、私の年齢(学年で言えば、24の歳。これも また、偶然ではあるが私が丑松に強く惹かれた原因の一つである)を聞いた周りの大人達は皆一様に私の若さを羨み、如何に若いということが素晴らしいかを私に説いた。むろん、そういう場面に幾度も出くわしている私は、その回数によって、若いということの素晴らしさについて若いながらも確信している。それに、過去というものが大抵美しいということについても気づいている。しかしながら、そういう言説は今の私には責苦でしかないのだ。負い目のせいで常に拷問に苦しむ私にとって、「今」は苦痛そのものなのである。また、若いという素晴らしい時代を全うできないことが何より辛く、それは大変大きなチャンスを流しているような感覚で、つまり相 対的剥奪感を味わっている。そうであるからして、いっそ若さなど手放してやりたいと切に思うのであり、丑松の気持ちが痛いほどわかる。
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