恋する少年十字軍

3件の記録
- 芋蔓@imzr2025年10月11日読み終わった短篇集で、長めの短篇が3つと、10ページ弱の短い短篇が4つ入っている。表題作と『非行少女モニカ』が特におもしろかった。 ……たとえば仕事のとき使う耳栓は、赤なら「恋人募集中」、黄なら「ご想像におまかせ」、緑なら「恋人あり」という意味です。わたしはそんなことも知らないで、これまでずいぶんデタラメに耳栓の色を選んでいました。恥ずかしいです。また世の中では、 「馬鹿と性交すると、馬鹿がうつる」 と言います。誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。わたし自身も知らぬ間に、ずいぶん長くこの説を言じてきたように思います。誰とでも性交するのは向こうみずで、よくないことだと。しかし工員乙女たちが実地に試してみたところによると、馬鹿と性交しても、馬鹿は少しもうつらなかったそうです。この珍説は、結婚前に女がやたらと性交しないようにするための、いわばでっちあげでした。こうした話はどれもこれも、とても勉強になるのでした。…… (非行少女モニカ)
- Aruiwa@atodeyomu2025年5月28日再読中特に表題の作品には読んでいてヒリリとする一文やユーモアがそこかしこに散りばめられている。楽しいのにずっと不穏。名作。 「だから今日も瞬点は、声明案を練るために、テーブルにノートを広げている。まだノートは自紙。なにも書かれていないページを見つめていると、どこからかため息が聞こえてくる。行列を作って並ぶのはいつも貧乏人ばかり。金持ちはいつでも先頭に割り込めるか、そもそも並ばなくてもいいようになっている。ノートの野線が憎い。罫線に字を並ばせようとするのは誰だ?」 (恋する少年十字軍 p.45)