回樹

9件の記録
- 村崎@mrskntk2023年3月27日「その愛は消去法」、この文章を読んだときびっくりた、卒倒するかと思った。それを言ってしまうんだ…という衝撃だった。なんて残酷な真理を暴いてしまえるんだろう…そう思いたくないけど消去法で人とつきあうってことはある。消去法の愛は、「本物の愛」には遠く及ばないし、そもそもそれって愛なのか? そんなふうに思考の迷路に迷い込ませる。そもそも「四十点」と初露のことを言ってしまう律の気持ちは……ああ……。 愛というのは、目にみえないから厄介だ。だから「愛」を証明できる回樹にすがりたくなる律の気持ちが、私にはすごくよくわかる。だけど目にみえないからこそ、陳腐な言葉だけど愛にはいろんなかたちがあって、目にみえないからこそ、信じたくなるもので、絡まりやすいものなのだと思う。回樹は解呪、死体が呑み込まれていくことで、とらわれていた呪いから解かれてゆく。だれかに抱く感情や抱かれる感情は、呪いになるんだなあと思う。 だれかとつきあっていくのは、きれいなことばかりじゃない。むしろ自分本意なことばかりで、価値観や考えを押し付け合って、愛どころか嫌いという感情すら芽生えることもある。相手が死んでしまったあとも、自分勝手な感情を抱いてしまったことは消せない。 でも初露の死体をかつぐ律の姿を想像すると、私はもうそのかたちが愛にしかみえない。いつか薄れていくものでも、消えるものでも、まったく違うかたちに姿を変えるものだとしても、それはもうふたりが築いてきたものだ。最初から最後まで濃厚な時間を過ごせる、「回樹」は本当に本当にいい作品です