小説トリッパー 2024年秋季号

2件の記録
- 橋本亮二@hashi_shi2025年6月24日読み終わった大原鉄平さん「八月のセノーテ」を読みたかった。両親からも、それぞれサバイブしているはずの同級生からも、部活の先輩からも頼りなく見られている中1男子。彼の突破点に触れられてよかった。張りつめた、苦しい読書でもあったけど読了したいま、もはや再読したくなっている。 「チグの家」(『小説トリッパー」2025年春季号)で大原鉄平さんの存在を知れた。
- 村崎@mrskntk2024年10月12日八月のセノーテ/大原鉄平 地盤地下していることが判明した街が舞台。静かな文体で、街の雰囲気が伝わってくる。少し前の年代が舞台なのかな? ちょっと寂れた雰囲気。少しずつ沈む街を週刊誌に書かれて苛立つ大人と、街が沈んだらどうするかを考える子どもたち。大人の苛立ちは常に子どもに向けられるうえ、野口先輩のような「強者」の暴力も受けないといけない。そんな理不尽のなかで、怒りと一言ではあらわせない感情も街と一緒に沈んでしまいそうなやるせなさがある。でも「しるし」を持って いるかぎり、りょうや月見先輩、仁募たちは沈みきらずにセノーテを通って光の向こう側は行けるのだと思う。しるしは、たぶん決意や誇り、覚悟みたいなもので、それをひけらかす大人になるのか、いつまでも大切に自分のなかにしまっておけるかがきっと分岐点で、子どものままでいたくないだろうけど、今の子どものまま大人になってほしいと勝手なことを思った。街が仮に沈んだとしても、光がある場所を見失わないでほしいと思った ゲーテはすべてを言った/鈴木結生 あるイタリア料理店でティーバッグに書かれていたゲーテの名言、その出典を探し求める話。いろんな名言が出てきておもしろい。ゲーテに限らずこの世の言葉(金言/善い言葉)はすでに多くの偉人たちによって確立されていて、大体が引用か真似事になるんでは?という気持ちにさせられたり。ゲーテまったく詳しくないのでこの作品独自のおもしろさを真に感じられてはいないと思いますが、全体的にコミカルな雰囲気で読みやすさもあっておもしろかった。ラストのさわやかな感じも好き。ゲーテがすべてを言ったとしても、その断片から広がる世界もたしかにあるはず。「結局作家や思想家っていうのはどこかから飛んできた木の葉一枚から、自分の森を創り上げてしまう人間だろう」、きっとそのとおり、だれかが言ったことの引用だったとしても、本の言葉ならそれは自分の言葉でもある (とゲーテは言っていたかもしれない)