春の嵐―ゲルトルート (新潮文庫)

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- CandidE@araxia2025年4月1日読み終わった今回は、ヘルマン・ヘッセの作品群を『ガラス玉演戯』という仰ぎ見る山への登頂と見立て、その下山の過程として本書を読んだ(その1) ヘッセの描く青春は、不幸や苦い経験という氷の上で悠々とアイススケートを楽しみ、さらにはアイスクリームまでも嗜むくらいの心持ちで、冬の日差しと共に朗らかに過ごすことを教えてくれる。その寒さの痛みすら味わい深く、清々しい。そして、次の春の嵐を待つ――そんなふうに生きてみたいものだ。初期ヘッセの瑞々しい感性と、後年の達観の双方が垣間見える一作である。