貧困とは何か

2件の記録
- 仲嶺真@nihsenimakan2025年5月4日読み終わった本書は全7章から構成されている。 序章では、「貧困」という概念、「貧困」の定義、「貧困」の測定について説明している。 これらが貧困理論に関わる基礎となる。 第1章から第3章までは、「貧困」という概念(貧困の意味)の歴史的変遷を追う。一九世紀以降、現在に至るまでに、「貧困」という概念は段階的に拡大してきた。具体的には「絶対的貧困」→「相対的貧困」→「社会的排除」という発展過程を経てきた。こうした拡大は、「貧困」の意味内容に新たな要素が追加されたということを意味している。それをめぐる理解は、現在の貧困理論の到達点(意義)の理解につながる。貧困をめぐる理解を理論的に深めていくことによるメリットは、形成すべき制度・政策や要請されている取り組みを論理整合的に導出できるというところにある。逆にいうと、それが十分でないならば、きちんとした貧困対策を実施できない。貧困対策は他の諸政策や対策と同様に、「勘」や「感情」に頼って実施されるべきものではなく、理論に基づいて実施されるべきものである。 第4章では、「子どもの貧困」問題について検討することで、貧困と子どもの権利についての考えを深めたい。子どもの貧困対策は、将来の子どもへの「投資」なのか?それとも、一人ひとりの子どもが当然持っていなければならない「権利」のためなのか?そのような問いから始める。これらのいずれを優先するかによって、現在のみならず将来社会のありようは大きく変わり得る。 第5章は、「貧困の根絶」をテーマにしている。第4章までは概して貧困の「緩和」が中心であったが、本章は貧困根絶のために必要な視点を提示している。貧困を「緩和」すればそれだけでよいのか、「根絶」まで目指すのかという選択は、わたしたちが、どのような社会を選択するのかという判断を含んでいる。簡潔にいえば、最終目標として、「行き過ぎた資本主義社会の是正」を目指すのか、「資本主義の超克」を目指すのかということとも関係している。 pp.12-14