J・S・ミル
4件の記録
- こよなく@funyoi2026年3月18日読み終わった面白かった。というか、かなりミルと相性がいいと感じた。原典に当たれば印象は変わるかもしれないが、少なくとも本書を通して触れた思考は、自分の感覚に近いものがあった。 特に印象的だったのは、ミルが道徳感情を生得的なものとは考えていない点である。そのため彼は、自分が推理する機械のようであることに悩み、「精神の危機」に陥る。しかし、マルモンテルの『回顧録』に触れて感動した経験から、感動することそのものに自分の意志を見いだしていく。この過程が、理性に偏りすぎず、感情の陶治へと向かい、好感と共感を覚える。 またミルは、道徳感情を生得的なものとしない一方で、それを否定するわけでもない。むしろ、人間の行為の動機や目的を利己的なものに限定する見方に対して、それはその人自身の尺度でしか世界を見ていないのだと批判する。しかし同時に、人は自己利益を優先する存在だという前提に立ちながら社会制度を構想する現実認識と、そのバランスが面白い。 自由の原理も興味深い。他者の自由を侵害してよいのは、自分や社会への危害を防ぐ場合に限られる。それ以外の理由で権力を行使してはならないという考え方は明快である。ミルは、自由の原理が脅かされる原因として、人々が自由の価値に無関心であることを挙げる。人間が不完全である以上、多様な生き方や試みが認められなければならないのだ。 幸福についての考え方も面白い。人は目的や理想を掲げ、それに向かって行動するが、それが実現するとは限らない。それでも幸福を直接の目的としないことで、結果として幸福がもたらされる。運命や偶然に屈服しないための、一つの構えだ。 さらにミルが教育を重視している点も重要だと感じた。自由な社会は、制度だけで維持されるものではなく、それを支える個々人の思慮によって支えられる。ひとりひとりが社会や自由について考える力を持たなければ、その基盤は容易に揺らいでしまう。 社会を知ること、他者を知ること、そうやって道徳的感情も育まれるのだろう。


