差別とハンセン病

3件の記録
花木コヘレト@qohelet2025年11月29日読み終わった図書館本ハンセン病痛恨の極み、という書籍です。まったく私はハンセン病のことについて知らなかったと、思い知らされました。そういう意味においてです。 本書の一番の特徴は、本拠地を長野に置いていることです。著者が信濃毎日新聞の記者だからです。こういう、地方独自の目線の書籍は、都市部に住んでいる人間にとっても非常にありがたいです。長野においても、かつては(今も?)ハンセン病がどれだけ恐れられていたのか、その肌感覚がリアルに伝わってきます。非常にシビアな内容です。 次に、細かい所ですが、行政の人間に取材ができていること。著者は、長野県衛生部の方とコンタクトをとっています。こういう文章は、新聞記者の方でないと拾ってこれないと思います。当事者の著書や、学者の本もいいですが、記者の本の良いのは、なんといっても取材力が社会全体に広がっていること。取材力が高いです。 そして、やはり取材力に関係することですが、二番目の大きな目玉は、「ハンセン病問題に関する検証会議」の副座長の内田博文さんにインタビューが、載っていることです。これは、法律家としての、裁判に関する肌感覚が伝わってきます。熊本裁判では傍聴席側にいた方ですが、法律で戦う側の人としての意見が聞けるのが貴重です。 そして、本書のものすごい力は、最後の三つ目です。先に挙げた検証会議の報告書、1500ページに及ぶもの、の要点がコンパクトにまとめられています。僕は、ハンセン病の本をあれこれ読んできたつもりですが、検証会議の報告書にまともに取り組んだ本は読んだことがなかったです。ここでは、いかに国側が、患者や回復者の弱点につけ込んで、隔離政策を継続してきたかが、浮き彫りになっています。国は、治療を人質にしながら、隔離を当然ごととしてきたのです。決して許されることではありません。そして、胎児のホルマリン漬けの標本の存在の事実については、私は目を白黒させながら読みました。胎児の両眼が抉り出された状態の、胎児の標本があったそうです。これは医療行為では決してありません。人間としての守るべきものを踏み外した、蛮行であります。 自分がいかにハンセン病について無知であったか。それを知らしめてくれる、とてもとても有意義な新書です。読めて本当によかったです。





