盤上の向日葵

2件の記録
- シンジ@shinji2025年10月11日読み終わった『孤狼の血』に衝撃を受けて以来、柚月裕子さんの作品を幾つか読んだ。『孤狼の血』シリーズ3作。検事佐方貞人シリーズ、『慈雨』、に続いて本作。 自分は将棋はやらないので、どんなもんかな?って感じで読み始めた。確かに将棋を指す場面も多く、わからない箇所も少なからずあったが、それを差し引いても引き込まれた。 特に上巻では、後に天才棋士となる上条少年の生い立ちの凄絶さが描かれる。父親から虐待(DV、ネグレクト…)を受け、心を閉ざしていた上条少年が、唐沢との出会いで将棋の才能を開花させていく過程がよく描かれている。 刑事二人のパートを通して事件のディテールも謎も徐々に明らかになる。 事件を追う警察パートと、上条を中心に描かれる将棋パートとが、少しずつ交錯していくとともにぐいぐいと引き込まれた。 それにしても、ヤクザ、警察、検察、そして将棋界と、作者の取材力とその情熱には頭が下がる。緻密な取材あってこその心理描写。そしてどの作品でも世界に引き込まれてしまう筆力…。