富士日記 中巻 改版

富士日記 中巻 改版
富士日記 中巻 改版
武田百合子
中央公論新社
1997年5月18日
3件の記録
  • ちびっこ
    ちびっこ
    @chibicco
    2025年10月31日
  • ちびっこ
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    @chibicco
    2025年10月27日
  • noko
    noko
    @nokonoko
    2025年5月27日
    ワンピース仕上る。花子に着せてみたら、あまり似合わない。しかし私は黙っている。 ピンク色の豚と、黒色の豚がいる。全身黒くて右の前足だけピンク色の豚もいる。間違って生れてきたようで気の毒だ。餌箱の中一杯にねそべってしまっている豚がいた。自分は満腹だが、他の豚に餌を食べさせたくないのだ。その気持ちはよく判る。 「見せたやな さるすべりの花なよなよと うす桃色が風になびくを」。原爆が落ちたとき死んでしまった夫に、見せたいなと語りかけているのだそうだ、このやさしい歌は。自分もあとから原爆病で死んでいった女の人の歌だ。さるすべりが咲いていると何だか必ず思い出してしまう。 庭へ出ると、雲はなく、星がうっすらと出ている。月が南隣りの高い白樺林の上に出ている。ぴかぴかした白金の円盤のようだ。庭中に月の光は一杯。おっとりと明るい。あの世というのがあるとしたら、こんなところなのかもしれない。よく見ないで、一寸だけ見て、ナンマンダブツといって家の中へ入る。
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