悪意の日本史

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和月@wanotsuki2026年9月26日読み終わった面白い、と書くと語弊があるけど非常に読み応えがあり、興味深い本だった。 ネットでのアンチコメントや炎上は昔から変わらず存在しているが、最近はより過剰というか、潔癖度合いが増している気がする。 非難される対象は多方に散らばっているが、より社会的地位の低い弱者か権力を誇示する強者に矛先が向けられがち。少し前はそんな風潮だったように思う。しかし昨今、「弱者」「強者」とは別ベクトルで、「間違いを犯した対象」への非難が激化している。デジタル化が進み、昔の情報が残り続けることになったことも要因の一つだろう。口承や記憶のみで語られていた悪行も、記録として可視化される。一つ事件が起こると、過去のあれこれが掘り起こされる。無断転載により拡散されて、対象は袋叩きに遭う。それは全て「間違ったモノ」に対する「正義の鉄槌」として正当化される。ひっきりなしに繰り返されているこれらの現象は、現代特有だと思っていた。 しかし日本の歴史を遡ると、天津神国津神の時代から悪意は蔓延っていたのだと著者は語る。 学生時代、「ヤバい児童虐待だな」と感じていた『落窪物語』等が取り上げられていて、著者の現代語訳もわかりやすくて面白い。 悪意の今昔を振り返ると、人間の本質は変わらないんだな……と呆れ半分感心半分という感じ。 特に、狙いを定めるのが後から反撃されることの無い弱者や失墜した権力者な所。世間を味方につけて叩く精神は昔から変わらない。 また、恐怖を覚えたのはルワンダ虐殺の話。 分断することで、対立する相手を非人間と洗脳する所が恐ろしい。曖昧な情報や偏った知識は、凡庸な人間を残虐な怪物に変える。 相手が同じ人間であると知ること。そして何より、自分自身の悪意に自覚的であること。その2点を意識して生きることが、我々が畜生道を免れる唯一の道なのではないだろうか。 本書を読んで、悪意の長い歴史と脅威を学ぶ機会を得ることが出来た。 大原ひかり氏の文章がとても読みやすく、作中で省略されていた他作品のテーマも気になったので今後読んでみたい。





