ナショナリズムの正体

2件の記録
- 句読点@books_qutoten2025年8月19日読み終わった最初に出たのは10年以上前だが、ますますこの本で語られる危機感が現実のものとなりつつある。すでにこの世を去った半藤一利さんがまだご存命だったら、きっと深く嘆いたに違いない。 ナショナリズムと一口に言っても、内実はさまざまであり、「良い」ナショナリズムもあれば、「悪い」ナショナリズムもある。前者は、自分の生まれた場所、受け継がれてきた文化、精神風土に愛着を持とうとする態度。これはこの本の中では庶民的ナショナリズムと呼ばれる。後者の悪い方は、国家が至高の存在とし、国民にその国家目標のために奉仕することを求める態度。戦前日本はまさしくこちらだった。注意しなければならないのは、良いナショナリズムが加熱すると悪いナショナリズムに変質する恐れがあるということ。 むしろ、悪いナショナリズムは、権力を維持したいものたちにとっての道具であり、不安や「愛国心」などの感情的なもので国民を煽り、統治のために利用しがちだということだ。 それを防ぐためには、庶民ナショナリズムの次元で留まり、他国にいる、この同じ層に居る人たちとの交流を深め、相互理解を重ねていくこと、急進的な改革ではなく、地道な、時間のかかる対話を重ねていくこと、だという。 参政党という、安倍政権よりもさらに酷い極右ポピュリスト政党が幅を利かせている。そんな連中を嬉々として支持する人たちがたくさんいる今の日本に幻滅する。どうやって抵抗すればいいのか。個人としてはできることは、まずこのようなきちんとした研究者の書いた本を読み、事実を知ることだと思う。そして明らかに危ない流れが起きていると感じたら恐れず声を上げることだと思う。