あのひとは蜘蛛を潰せない

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- あむ@Petrichor2025年8月27日読み終わった中盤のザラザラとした苦しさに読むのを投げ出したくなるほど心をもっていかれました。 でも、最後まで読んでよかったと思います。 以下ネタバレ含みます --------------------------------- 「みっともない」 「足が太い」 「頭が悪い」 母親から言われ続けた言葉をまるごと自分の評価と捉え、まるでそうならねばならないという使命感に囚われているような主人公の姿は呪われているようだった。 幼少期から繰り返し浴びせられる言葉は呪いだ。 自分はそういう人間なのだろうか。 という疑問はいつしか そういう人間だから失敗した。 という確信に変わり、自分で自分をそういう人間に仕立て上げる。 きっと主人公の母親もまた、呪われていた。 呪いは他者に押し付けることで一時の快楽となり、また呪い、呪われていく。 過干渉の親に嫌気が差し逃げ出した主人公が 快楽のままに恋人に過干渉になっていく様にはゾッとした。 この物語に自分を重ねれば重ねるほど、読み進めるのは辛く苦しい。 私も、逃げ出したくなった。 自分を写す鏡のようで、顔を歪めながら読んだ。 この物語がある種の救いのある内容で終わるのは、そんな読者に対する救いなのだろうか。 この物語に登場する人物は、みんな弱さを持っている。 そんな弱さを分かち合い、支え合うことができたら、結末は救いになるのだと、作者は知っているのだろうか。 残念ながら、私はまだ知らない。 無自覚に呪いに蝕まれ恋人に過干渉になった主人公が、わけもわからぬまま恋人に捨てられる物語でなくて、本当によかったと思う。 そんな悲劇がまかり通る現実の世界で、この本が誰かの救いになればいいと思う。