木乃伊の口紅

木乃伊の口紅
木乃伊の口紅
田村俊子
不明
2012年10月4日
2件の記録
  • 🦈
    🦈
    @Lore_Link
    2025年11月14日
    ロケーション404 みのるはその萬一の僥倖によつて、義男が自分の經濟の苦しみを免れ樣と考へてゐる事に不快を持つてゐた。この男は女を藝術に遊ばせる事は知らないけれども、女の藝術を賭博の樣な方へ導いて行つて働かせる事だけは知つてゐるのだと思ふと、みのるは腹が立つた。 ロケーション415 「働かないとは云ひませんよ。けれども私が今まで含蓄しておいた筆はこんなところに使はうと思つたんぢやないんですからね。あなたが何でも働けつて云なら電話の交換局へでも出ませうよ。けれどもそんな賭け見たいな事に私の筆を使ふのはいやですから。」 ロケーション501 義男にしては二人の間を繫いでるものは愛着ではなかつた。力であつた。自分に持てない力を相手の女が持ち得るものでなければ一所には居たくなかつた。
  • さかな
    さかな
    @sakana1316
    2025年10月10日
    田村俊子、女性同性愛の表象あたりの論文を探してると必ずヒットするので、とりあえず何か読みたい、と思って青空文庫を検索したらこれしか無かったが、タイトルが読めなくて気になったので読んでみた。よかった。文章が上手いと思った。私だったら目を背けたくなる正直な感情を書く人だと思った。いちいち言葉が美しくてするする読んでしまった。話は妻が荷物だから別れたい夫と、芸術をやりたいが上手くできず、夫とも別れてやりたいけど経済的な事情でそうもいかず、ずるずるとやっていく2人の話で、べつに話としては面白いとは言えないかもだが、なんかよかった。別れたいけど別れられない、芸術をやりたいけど、上手くいかない。でもそれが終わりでも深い絶望でもなくて、ただただ現実で、という感じの空気。創作って誇張されてるものだと思うけど、これはなんだか誇張を感じなかった。そこに少し救われる気持ちがある。上と下の間を描いてくれることの有り難さなのかな。上にも下にも自分がいない時に、掬ってもらえたような気持ちになる。ちなみに二人の間に愛はあると思うけど、クソ素朴で、全然綺麗じゃなくて、いいです。でも文章はずっときれい。でも誇張されてる訳じゃない。不思議。ちなみにタイトルの木乃伊は、みいらと読みます。
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