美しさと哀しみと

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しがない@ooe2026年5月25日読み終わった女の勘はするどい、そして女はこわい。 読み終わるときに、作品の美しさと抒情のなりゆきに感服して涙を溜めてしまった。 川端といえばセリフ回しを多用する、段落の多い、短絡的な文体が印象的で、それが彼特有のはかなさをまとわせるのだが、この作品は後半になるまでそれを封印している。 そして前半はまったく川端らしくなくて、主客の状態描写から始まり、段落ごとの説明もヘビのように長い。それは彼の『名人』で見られた文の体系ではあるのだが、決してその作品のようにルポの冗漫さには陥らず、そこには美しい文章と表現が紡がれている。 また文章だけではなく、そのシナリオも川端作品のなかでは逸品ではないだろうか。それは文章を通して、晩年の彼自身にどこかぼんやりした影が見え、またその影がキャラクターに影響しているからこそ、陰鬱なはかなさが話の中の人間の関係性にも漂っている。それがストーリーに深みを持たせている。 また描写がエッロイ。いやらしいとかよりもエッロイ。本を離れて60歳の晩年のじじいが書いてると思うと気持ち悪いが、描写は決して気持ち悪いとはならず、ただただエッロイ。そんな審美眼でまだまだ女の美しさが新たに描けたのかと、ただただ表現力に驚嘆するばかりであった。 いままで川端の文庫本はほぼ全てを読んだつもりだが、個人的には最高傑作である雪国についで二番目に好きだ。いや、読み終わった当初は一番であった。それほどに自分の中では衝撃だった。 この作品はかなり過小評価されている。過小評価されすぎていると思う。 新潮ではなく中公から出版されたというのはあるだろうが、なんとも納得がいかない。それほどまでにこの作品は美しく、そして哀しい。





