管太
@r_f_1
2026年3月3日
成瀬は都を駆け抜ける
宮島未奈
読み終わった
とても面白かった。シリーズ三作品の中で一番好き。
成瀬が周りの人間たちに主人公性、成瀬性を振り撒いて、みんなが主人公に、成瀬になっていく話。主人公(成瀬)をモブキャラから描写して、主人公だな、と思いながらも、自分も成長しよう、と思えるような小説。素晴らしいフォーマット。
そして最後には島崎みゆきが成瀬になる。「わたしの代わりが務まるのは島崎しかいない」(191頁)とあるが、今はそうなのかもしれない。しかし、更に月日が経てば今作品に登場したキャラクターたちでも成瀬の代わりが務まる人間になっているのではないか。全員が成瀬に引っ張られて、頑張って、成長していくのだ。あかりという名前に込められた意味である『まわりを明るく照らす子になる』を、本当に体現している。
しかし、もちろんそれだけではなく、成瀬だって成長している(133、147頁等)。周りのキャラクターと接することによって、新たな気付きがあったりして、成長している。これは当たり前の話である。しかし我々は成瀬がとても高いところにいて、成長の限界点にいるように見えるかもしれない。きっと他の登場人物でもそう見えているキャラクターはいる。なぜそう思うかと言うと、我々が成瀬あかりに憧れているからである。成瀬あかりを見上げるからこそ、尊敬するべき成瀬あかりという枠にはめて認識するのだ。しかし成瀬だって一人の人間だ。これは成瀬以外のキャラクターが成長し、そして成瀬もそれに呼応するように成長する、成長譚とも読める。
西浦が出てきたのはとんでもなく嬉しかった。一作品目を読了した時、多分こいつは一生成瀬のことが好きだろうと思っていたが、その通りだった。描写の終わり方もややオープンでうまい。解釈は我々に委ねられる。個人的には一生甘々な恋愛をしていてほしい。
究極のリアリズムでリーダビリティが非常に高い。しかしそれだけではなく小説としての味があるし、熱い気持ちにもなれる。終わってしまうのは悲しいが、いい所で終わったという感じもした。『それいけ! 平安部』も面白かったので、宮島先生の次作にも期待。
