管太
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大学生。小説執筆(カクヨム等)
- 2026年2月22日
太陽の塔 (新潮文庫)森見登美彦読み終わった『成瀬は都を駆け抜ける』で森見登美彦作品が登場する章があったので、急遽積読だった当作品を読んた。 男汁がほどばしった小説。男子大学生からの目線から言わせてもらえば、男の心の奥を恥じることなく包み隠さずに独白した小説だと思う。 作品を通して主人公は、強がっている。心の中ではこの真実に薄々気付いているのかもしれないが、それを認めてしまったら全てが崩れてしまう。だから、強がり続けなければならない。「どんなことを為すにしても、誇りを持たずに行われる行為ほど愚劣なものはない」(13頁)と書かれている通り、主人公は自分に誇りを持っている。 法界悋気という作品通してのキーワードがある。法界悋気でええじゃないか、というのが作品に渦巻くテーマであり、強がりの結晶なのではないか。 叡山電車で彼女の夢に入る、となった所は面白い。ただこの夢の冒険に物語が向かわないのか、と少し残念に思った。この作品独自の味が深められるのではなく、ただただ男汁を強く感じた。それこそがこの作品なのかもしれないが。 終わり方もよく分からなかった。「読者が想像されるような結末」が検討つかなかった。まだまだ作品への寄り添いが足りないのかもしれない。 「もし精神が位置エネルギーを持つとしたら、落下するときにはエネルギーを放出するはずだ。それを利用できればなあ」(141頁)は本当にその通りだと思った。 一、二年前に読んでいたら今の数十倍くらい刺さっていた可能性のある小説。好きな人は本当に好きな作風だと思う。 - 2026年2月18日
東京奇譚集村上春樹読み終わった奇譚だった。五つの話全てが不思議な出来事。村上春樹の筆力でリアリティのある文章として楽しめた。 『偶然の旅人』 作者の語りというのは新鮮。だが村上春樹の知人の話がストーリーとして語られる。知人は音に対しての感度が高い。沈黙の種類を聞く、というのが独自の感覚。男が自分の道を選ぶことによって、本来の自分に戻ることができた。その本来の自分を選択し続けることによって、真実が掴めた。現実にも不思議なことってあるよね、と言った話。 『ハナレイ・ベイ』 「サチの息子は十九歳のときに、ハナレイ湾で大きな鮫に襲われて死んだ」という一文目のインパクト。話のリアリティ・ラインが非常に高い。息子の火葬の料金をアメリカン・エキスプレスで払っていることに対する非現実性も、たしかにと思った。愛情があったのかなかったのかわからないような親と息子。しかし、意識していなくても確実に深い愛情で繋がっている。そんなことを思った。 『どこであれそれが見つかりそうな場所で』 何度読んでもよく分からない作品かもしれない。資本主義や宗教から超越したものこそがヒントなのかもしれない。 『日々移動する腎臓のかたちをした石』 奇譚性は一番薄いのかもしれない。「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない」というのはどこか自分と照らし合わせて考えてしまった。秘密が多い女の魅力はすごい。その秘密を追いかけたくなってしまう。対して主人公は女に(小説の展望という)秘密を教える。そうすると、女はさらなる世の中の秘密を教える。その『秘密』が時間をかけて主人公を揺さぶる。最後に主人公は女の秘密を知り、女から解放される。このことは、主人公にとって「本当に意味を持つ」。主人公の成長譚としても読める。 『品川猿』 名前を盗む猿によって女性が成長する。品川猿はいい存在なのか、悪い存在なのか。それは、どちらでもある。名前を盗むのは当然悪いことである。しかし、それと付随して品川猿は主人公に真実をもたらした。ただ『品川猿の告白』を先に読んでいたので、個人的には猿はただただ利己的な動物に思えた。品川猿という厄災を経て成長できるかは、その人次第。 - 2026年2月14日
読み終わっためちゃくちゃ面白かった。 諧謔溢れる書簡体小説。テンポもよく、読みやすい。終盤はまだ終わってほしくないな、と思いながら読んでいた。 マシマロマンに最高厄介なお姉様、見どころのある少年から「森見登美彦」。登場する全てのキャラクターが活き活きしていて、主人公の世界を彩る。そして主人公に奇妙な共感が生まれた。もしかしたら自分も阿呆なのかもしれない。 我々は楽しくこの小説を読むが、本当に論理的に計算され尽くされている小説でもある。ここでこの情報を出して、そこで伏線を張って、あそこにユーモアを……。私は森見登美彦氏に『恋文の技術』を書く技術の教えを乞いたい。 ユーモラスだが知的で、どこか箴言めいた一節も所々に見られる。 七尾に行ったこともあったため、かなり懐かしい気持ちにもなった。面白い小説なのでぜひ。 - 2026年2月9日
負けヒロインが多すぎる!(8.5)いみぎむる,雨森たきび読み終わったぬっくん、よくない。刺されないように頑張ってほしい。 温水くんが主人公ではなく、ガールズ(特に八奈見さん)がメインに描かれていると感じた。温水くん視点の時はこの作品特有の口に出すセリフとモノローグとしてのセリフの使い分けが面白い。それ以外の視点では一人称に近い三人称でヒロインたちの内面も描かれる。 原作『負けヒロインが多すぎる』には、狂気的な愛を持つヒロインが幾度となく描かれている。普通ならコメディにならないくらい怖さを感じる恋心。その狂気的な愛を、温水和彦という鈍感な主人公によってコメディとして描かれている。これはとんでもない小説なのかもしれない。特に朝雲・白玉・佳樹の三狂気女は、読んでいるだけでヒリヒリしてくる。朝雲さんのエグさ。純文学かと思った。これをコメディとしてラノベの文体に落とし込んでいるのはすごい試みなのかもしれない。白玉ちゃんの魅力はすごい。現実で出会ったら絶対に好きになってしまうと思う。こういうエグい女子が現実にもいそうで怖い。こういう女子の目的は何なのだろう。かのかりの七海麻美みたいな底知れぬ怖さがある。佳樹は切ない。 そしてこの巻は八奈見さんの巻だ。八奈見さんは過去の恋愛で吹っ切れられず、負けヒロインになった。八奈見さんは煮え切らない女の子なのだ。そして今対象を袴田から温水くんに移して同じ恋愛が再生産されている。 八奈見が頑張って自分の恋愛を掴み取ることが、勝ちヒロインになることができるのか――ピアスに手を伸ばせるのか――大注目だ。 ヒロインレース的には檸檬がリード、それに継いで想いを伝えた馬剃さん。あとは温水くんの恋愛対象に入っていないのかもしれない。 今一番ノリにノッているラブコメ。そろそろ終盤に差し掛かるのかもしれない。 - 2026年2月6日
蛇にピアス金原ひとみ読み終わった言語化できない黒くて大きな澱のようなものが、作品に通底してある。思わず一気に読んでしまった。 人間社会には「所有」という仕組みがあり、所有する美学と所有しない美学がある。主人公はアマとの別れにより、所有する美学を選択した。所有し、自分の血肉になることを望んだ。 主人公はこの作中で知らず知らずのうちに愛を知る。自分自身を影にする方法を模索していたが、最終的には龍と麒麟とともに命を持つ。こんな一言では押し込めないし、これから二人がどうなっていくかもわからない。しかし主人公の中にかすかな希望もあるかもしれない。 再読したいと思った小説。 - 2026年2月5日
[新装復刻版]アヤワスカ!AKIRA読み終わった文化人類学でも文章を書く授業でも紹介された「アヤワスカ」。 AKIRA氏の文章は流石。ドラッグを摂取することによる幻覚や感覚を極限まで描写し、体験できないことを読者に体験させている。 細部の描写のおかげで実際にアフリカに行ったかのような気持ちになる。もはやアフリカの野生的な香りがしてきた。 サグラが扇情的すぎる。ドキドキした。ユパンキが本編通して出てきて、よいキャラクター。他にも人物の書き方がうまい。 未知を体験できた。良い経験だった。 - 2026年1月27日
- 2026年1月25日
生のみ生のままで 下綿矢りさ読み終わった盛大で曲がりくねった超純愛の物語だと感じた。 最初は恋愛の矢印が向き合わなかった二人。それが時間をかけて矢印が向かい合うようになる。時には片方から矢印が向き、もう片方の矢印は別の方を向く。はたまたかつて強く太い矢印を向けていたのに時間が経つとそれが綺麗になくなり、逆に昔は薄い矢印を返すだけだったのが今度は大きな矢印を向け直していたりもする。 好きな人の好きな人になることは、難しい。恋愛のお互いの矢印が向かい合うことなんて、奇跡みたいなことだと思う。でも、逢衣と彩夏はそれを成し遂げてしまう。 二人はこの恋を運命と言うが(103頁、245頁等)、そんなものはまやかしなのかもしれない。この二人は恋愛の矢印が向かい合わなくても、それが向かい合うように大変な努力と行動をしている。片想いから掴み取った両想いと言える。人々は掴み取った恋愛の神聖さを称する言葉として運命と言うのかもしれない。 仲好く(241頁)、仲が好い(242頁)という言葉がでてくる。「仲良い」ではなく、「仲好い」。この漢字の選択こそが逢衣と彩夏のこれまで、そしてこれからの関係を示す言葉になっている。 やはりとんでもなくリアリティの高い小説で、面白かった。『激しく煌めく短い命』も楽しみ。 - 2026年1月22日
檸檬梶井基次郎読み終わった檸檬を貰う機会があり、その時に「これは爆弾かもしれない」と言っていた人がいて、お洒落すぎると感動したため読んだ。 前にも読んだことがある気がするが、やはりよく分からなかった。「意識の劇化」という言葉が一番しっくりきた。 - 2026年1月21日
- 2026年1月21日
生のみ生のままで 上綿矢りさ読み終わった『激しく煌めく短い命』の前に読もうと思った。 かなりエンタメに近い文体だが、リアルであり変わっている登場人物たちは綿矢さんの小説でしか感じられない。細部の切り取り方がうまく、女の人が男の人をどう見ているかもよくわかる。逢衣は果物に例えると梨、それなら彩夏はダークチェリーだ、という表現は圧巻(194頁)。213頁の登場人物の過去への考え方については綿矢さんの小説にも当てはまる気もする。 レズというよりも、運命の人がたまたま女性だった。だから、お互いに惹かれ合うことに性別は関係ない。心が昂るシーンの表現からは目が離せない。 どこへ着地するのか楽しみ。 【下巻解説読了後追記】 この感想こそ同性愛を構造的に見ていたのだと痛感させられた。この構造からの脱却が『生のみ生のままで』いることなのかもしれない。 - 2026年1月21日
六人の嘘つきな大学生浅倉秋成読み終わったとんでもなく論理的に作られた小説。ロジカルモンスター。 「相楽ハルキ」と「嶌の兄」が結合した瞬間はまさに伏線が狙撃されたと感じた。「腹黒大魔王」という単語には人間の多面性というこの物語のテーマさえ感じ取れる。嶌の笑みは「多面性が隠れている人間」からの克服を意味し、そんな人間を愛することができるようになったということだと考える。 解説は、創作のヒントそのもの。論理的な小説を書くには、緻密な計算と策略が必要なのだと感じた。 - 2026年1月10日
人間失格太宰治読み終わった久しぶりに今すぐにでも先が読みたい、読むのを止めるのが惜しいと思う本と出会った。 太宰治の「本を読まないということは、そのひとは孤独ではないという証拠である」という言葉を象徴している本のように感じた。この本を読み切って少しでも葉蔵に寄り添えたなら、その人の一部には孤独がある。 葉蔵という人間の一生が描かれていて、本当に紆余曲折がある。それの全てに物語としての作為が感じられず、人間としての一生が描かれる。 この中編の中にも様々な恋の形が描かれているようで、その恋と孤独は隣り合わせである。 まさに文豪の作品。太宰に寄り添いたくなるような小説だった。 - 2026年1月4日
傲慢と善良辻村深月読み終わった『相手の選択』という仕組みを穿つ、婚活ミステリー小説。 恋愛小説を読むことは多いが婚活小説は今まであまり読んでこなかった。恋愛と婚活は別物なのだなと感じさせられた。 善良であるけど傲慢、というのは逃れられない思考の仕方なのだと思う。だから恋というものは難しい。お互いがお互いを100%と言える恋は奇跡のようなものに思えてしまう。でも人間はお互いが100%――少なくとも自分は100%を与えられる恋を求める。だからこの構造から逃れられない。恋という迷宮を彷徨うことになる。無限に広がる迷宮を彷徨って出した答えが人それぞれ違うから、恋の話は面白いのかもしれない。 この話で最も善良なのは花垣学で、一番傲慢なのは美奈子だと思った。花垣がモテないこの世の社会構造を改めて疑問に思った。美奈子は傲慢というか自分が主人公だと認識している自分勝手さがあり、旦那と架の運命を手に入れなければ満足できない人間なのだと感じた。それを自覚できていないという所から、真実の母と同じくらいの人間性レベルであると考える。世界を経験している自分勝手さと、世界を経験していない自分勝手さと言える。 小野里さんがアフォリズムを振り撒いていて、この人の話だけで一本の小説が書けると思った。「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です」(137頁)は、誰もがハッとさせられる文章である。 それぞれの登場人物のリアリティが高い。地震のボランティアというのを取り入れることでよりリアリティが高まる。 よい小説だが長いとは思った。もう少しコンパクトに『傲慢と善良』を表現することもできるかもしれないと思う。また、ミステリーとしての終わり方というよりは真実と架の成長譚といての終わり方で締められる。ミステリーとしては第一部で終わるとも言える。成長譚としての終わりと思えばふさわしいのかもしれないが、話の転換点がインスタのコメントという所で物足りなさとご都合主義さを感じた。 文庫本の朝井リョウさんの解説が見事。<私たちの身に起きていることを極限まで解像度を高めて描写>している、というのはこの小説が自分のこととしても刺さる大きな理由である。この小説の値段は朝井リョウさんである、と言えるとも考えられるのは、キレキレな指摘だと思った。 - 2025年12月28日
変人のサラダボウル(9)カントク,平坂読読み終わった世界一面白い小説と言わざる負えない。 無数の話の軸が錯綜している(ように見える)のにこんなに面白いのは意味がわからない。 友奈に白川京感があったり、時の飛ばし方が妹さえ感があったりで平坂先生の小説を浴びて、染みる。 まだまだ平坂先生に小説を書いてほしいな。 - 2025年12月23日
ゴールデンタイム2 答えはYES竹宮ゆゆこ読み終わった竹宮ゆゆこさんのハイテンションな文体で読んでいて飽きない。 加賀香子の描写は圧巻。美しすぎる女性という雰囲気がありありと感じられ、超越した美人を書けと言われたらこう書くのだ、と教えてくれているよう。 また、岡千波ちゃんがかわいすぎる。加賀香子という異次元の美人がいながら、香子が持っていない魅力を持つ岡ちゃんを多角的に描いていて、キャラがとてもしっかり立っている。圧巻の美しさの香子と、みんなから愛されるかわいさの岡ちゃんの対比というのは、作品のテーマにも響いていると思う。またこの二人の関係は『とらドラ』の大河と亜美をも思わせる。 展開についてはアニメで知っていたが、やはりラストが急であり、読者の理解を超越したご都合主義に見えてしまった。香子の気持ちが全く分からないということもないけど、その展開にするのであればもう少し匂わせがあってもいい気がした。二巻でくっつく、というのは珍しくていいと思う。つまりこれからは万里の過去を掘っていく、ラブコメでないもう一つの軸が中心の展開になっていくことが考えられる。 - 2025年12月20日
蹴りたい背中綿矢りさ読み終わった綿矢りささんの小説の主人公らしい主人公。 変わった主人公が小説を通して社会を感じ、成長するという構成は『インストール』等他の作品にも通ずる気がする。 「蹴りたい」という欲求こそが主人公とにな川の関係を表していて、恋心とも見れるが、恋心と一括りにするのも違う。それでも、変わった恋の形なのかと思った。 主人公とにな川は似ているが、違っている所もある。二人が孤独を感じるようになったことで、ある種想いを共有する。 - 2025年12月16日
神の子どもたちはみな踊る村上春樹読み終わった神戸の地震についての短編六作。 村上春樹の良さに触れられた。読みやすいものから意味が分からないものまで。 『かえるくん、東京を救う』のアフォリズムや、『蜂蜜パイ』の物語内物語など、小説としての味が深まる。 逆に読み取りずらくよく分からない表題作『神の子どもたちはみな踊る』等に、何かしらの真意が隠れているのだと思った。 - 2025年12月8日
憤死綿矢りさ読み終わった綿矢りさ先生の短編集。 リーダビリティが高く、読みやすい。作品ごとのテーマも味わい深かった。人間の人間らしさが描かれている。 『人生ゲーム』の余韻が気持ちいい。いつか人の一生を描く作品を書きたいと思った。 『憤死』は綿矢先生らしい作品だったが、男が主人公の綿矢作品はなかなか見ない。綿矢先生の恋愛以外の側面を見た気がする。 『おとな』一番怖い。子供の頃の恨みは忘れられない。 『トイレの懺悔室』「イニシエーションを企んだおとなが破滅する」が言い得て妙。 『憤死』憤死とはなんなのか。綿矢先生の筆で描かれる。 『人生ゲーム』人の一生性。運命、死ぬ時は決まっている。それまでの経路を楽しもう。傍から見ると、それはゲームみたいに楽しいものになっている。あなたの心の中にもお助けマンを! - 2025年12月7日
千歳くんはラムネ瓶のなか(3)raemz,裕夢読み終わったラノベリハビリ。 熱かったし、平坂読先生作品リスペクトが所々にあるように感じて嬉しかった。 大人としての明日風が抱えていた子供性を、朔のおかげで発露し乗り越え、更なる大人になって回帰する話。構造として美しい。 恋愛をしているけどくっつかない、をここまで綺麗に描ける作品はなかなかない気がする。濡れ場のないエロ。 参考にしたい所だらけ。
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