コダック "シン・ニホン" 2026年3月5日

シン・ニホン
シン・ニホン
安宅和人
4/5 安宅和人『シン・ニホン』は、未来を語る本として読み応えがあり、特に第4〜6章が面白かった。なかでも6.4で述べられる「菊の花構想」は、コスト削減につながるだけでなく、現状の“姥捨山”的な構造を改善する手法として有効だと感じた。 また、日本は「AI-readyではない」という指摘(理系人材の不足、諸外国と比べた人材比率の低さ、情報科学の素養を持つ人の少なさ)については、これまで十分に意識できておらず、新鮮だった。 第5章では、Ph.D.取得者の割合を増やすことや、研究予算そのものを増額すべきだという議論が展開されており、(自分が現在大学院生であることの影響も大きいとは思うが)かなり賛成できる内容だった。 一方で、「研究予算は数兆円規模で、これは〜の数%に過ぎないのだから実質ないようなものだし、増やそうと思えば出せる」といった論の運びには引っかかりが残った。方向性には同意するものの、財源や優先順位、実行上の制約に対する扱いがやや粗く、勢いで押し切っている印象を受けた。こうした論調は本書全体でも散見された。 さらにp.184の「集めすぎ」に関する議論についても疑問がある。知識や情報の価値はしばしばログ・スケール的に伸びが鈍化していく(限界効用が逓減する)のであって、「集めすぎ」そのものが悪なのではなく、単に効率が漸近的に下がるだけではないか、という点だ。もっとも、著者が言いたいのは「逓減する局面での投資配分や設計を誤ることが問題」という意味であり、結局は同じ話なのかもしれないが、ここは整理の余地があると感じた。
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