
りら
@AnneLilas
2026年3月5日
乱歩と千畝
青柳碧人
読み終わった
聴き終わった
文庫化待ち
本の中の本
明治・大正時代
@ 自宅
第173回(2025年上半期)直木賞候補作。
江戸川乱歩も横溝正史も読んだことがなく、杉原千畝のこともビザの件しか知らない状態で聴き始め、途中で何か気になってもあえて調べないようにした。
初めて知ることばかりなので乱歩の度々のスランプやら放浪癖、元担当編集だった横溝との関係性も、千畝のハルビンでのロシア人妻との葛藤や戦後の辛苦も、そして二人の節目節目での不思議な縁による邂逅も(フィクションとは知っていても)それぞれ興味深かった。かつ丼が食べたくなった。
国内で筆が進まず延々懊悩する乱歩よりかは、任務とともにユーラシア大陸を転々とする千畝パートの方が緊迫感があってスリリングでもっと読みたかった。
直木賞の選評では本作を明確に推したのはいちばん若い辻村深月だけだった模様。選考委員のような玄人な読者には看過できない瑕疵があったのだろうけれど、自分はこの小説に登場する作家だと松本清張とウールリッチくらいしか読んでおらず、乱歩への思い入れがゼロだからこそ楽しめた。ある程度読者を選んでしまう作品なのかもしれない。
ついでに言えば、もはや乱歩は子供が好きな文ストの乱歩少年とか、名探偵プリキュアとかの原形からかけ離れたイメージが強い(明智あんなの相棒がなぜ小林姓なのかも今まで知らなかった)。
千畝のことは、高校の芸術鑑賞がなぜか千畝が主人公のミュージカルだった年があり、しかし当時はミュージカル自体に興味がなくて全編寝ていたという残念な記憶しかない。こんなきな臭い時代だからこそ千畝のことを知れて良かった。
乱歩と千畝の出会いの鍵を握るのはホームズシリーズが掲載された「ストランド・マガジン」。オースティン・フリーマンのソーンダイク博士シリーズへの言及が何度かあり、乱歩が戦後あちこちの古本屋に探し求めたのはアイリッシュの『幻の女』(の原書)。
オーディブル2.2倍速。
