
浮舟
@ukibune_1991
2026年3月7日
古都
川端康成
読書日記
古都
古都のあとがきにもある通り、川端康成が睡眠薬を多用していた時期であり、病院に運ばれ生死の境を彷徨い目を覚ますと、どんな物語を書いていたのか覚えていなかったらしい。
そんな珍しい作品ではあるが、古都自体も少し風変わりであり、川端康成の特徴である"見つめる"行為と極めて"受動的な態度"が主人公には無い。
雪国の島村、山の音の信吾、千羽鶴の菊治、眠れる美女の江口、彼等はみな主体的に動かず、相手を手に入れようとしない。しかし、古都では千重子が苗子に対して複雑な感情から養子として来ないかと誘っている。この主体的な行動が川端康成の中で異質である。川端康成の虚無の中にある温かさが睡眠薬によって表れたのか、それとも女性だから自己投影しなかったのか理由は不明である。
また、生き別れの双子である千重子と苗子には身分の違いがあり、教養も異なる。苗子の希望と身分の違いから生じる絶望の狭間にいつも通りの幽玄な世界が広がっている。
古都は温かさと切なさが同居している奇妙でもあり、複雑でもある不思議な作品だ。
またいつか読み返してみたいと思う。