
まめご
@mmg_86
2026年3月6日
台湾漫遊鉄道のふたり
三浦裕子,
楊双子
読み終わった
借りてきた
この小説のことを書こうとすると、一体何からどう書き始めればいいのか悩んでしまう。
これは「美食×鉄道旅×百合」小説である、とあとがきに書いてあって、実際その通りではある。
どの切り口から読んでもとても面白いと思ったし、作品の構造に巧妙なしかけがあってそこも楽しめた。
また、主人公・千鶴子と千鶴の関係性の変化とリンクするような季節の移ろい、今はもう見られないという日本統治時代の台湾の風景と、ほとんどのものが今も食べられるという台湾グルメの対比なども面白い。
ただこれらはあくまで舞台装置であって、この小説の本質は、他者と、自分と、異文化と、向き合うことにあるのだと思う。
誰かと出会い親しくなっていく中で、相手のことを知りたい、理解したい、優しくしたいと思うのは自然なことだ。
その“理解”や“優しさ”が相手のためになっているのか、自分の思い込みや押しつけではないかとヒヤリとする経験は、誰にもあるんじゃないだろうか。
そのヒヤリがあればまだ良いけれど、気付けないまま自分ではいい事をしたつもりでいるのも怖い。
作中の「独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはございません」というセリフが重く響いて、自分はどうだろうと省みずにいられない。
また、旺盛というにはやや違和感すらあるほどの食欲が象徴する、主人公の千鶴子の中の「妖怪」を、彼女が克服していく様が描かれていたのも印象的だった。
克服というより癒しというべきかもしれない。
他者を大切にすることと自分を大切にすることは、表裏一体なんだろうと思う。
エンタメ小説のような軽やかさで、普遍的な深いテーマを考えさせてくれる、ちょっと新鮮な1冊だった。









