はるのななくさ "正欲" 2026年3月8日

正欲
正欲
朝井リョウ
そのニュースは、臨月の腹を抱えて入った、とんかつ屋のカウンターで見たテレビで映し出された。私はこの瞬間をずっと覚えているだろうな、と思った。 その後数か月して、人の佳さそうな夫婦がやっていたその店は、別の店に変わってしまっていた。 「気をつけて、元気な赤ちゃん産んでくださいね。」 そう言って見送ってくれた女性の姿を、ぼんやりと思い出す。 オウム真理教元幹部ら13人の死刑執行。平成最後の夏のこと。 「裁けない」。 その時私が、おそらくは多くの人が感じたのは無力感と仄暗い不安感だったろう。 私たちの法では裁けなかったもの。私たちの言語は何らの力も行使出来なかったもの。 それはつまり、「終わっていない」のだ。続いている。 正しさとは何だ。正義は、安全はどこにある。 正欲、 それをぶつけ合い殴り合い愛し合って、私達はこの社会にひしめき合っている。 ※自身のnoteにも同じ文章を掲載しています https://note.com/donotwantto_0226/n/ne2cce6fdcbc7?sub_rt=share_pb 吉田修一の『悪者』を思い出した。 わたしも「いなくならないから」って誓い合えるような繋がりが欲しいね。
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