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@casa_muma
2026年1月2日

優しい暴力の時代 (河出文庫)
チョン・イヒョン
優しい暴力の時代、というタイトルで、2010年代の韓国のリアルを描いた短編集。日常を写し取り、そこに過剰な解釈を与えない姿勢は、少し村上春樹の短編に似ている。似ていると感じる分、村上春樹との違いからこの作品が見えてくる。登場人物たちの思考のアクセルの踏み方や、時間の進みの描き方に勢いがある。我が子が知らぬ間に妊娠していた主婦、育児の悩みに関する良き相談相手を救わなかった母親、事故物件をつかまされた夫婦。嫌な予感とあっけない幕引きと宙吊りにされた読者の感情。派手ではない事件の数々をただ眺め、「そちら側」に立たななくて済んだ自分に安堵するとき、自分自身の中にある残酷さが鈍くも浮かび上がる。
