
橘海月
@amaretto319
2026年3月9日
山の上の家事学校
近藤史恵
読み終わった
妻から突然離婚を突きつけられ、娘とも離れて一人暮らしとなった幸彦。食事は適当でゴミは溜まり、生活は荒れている。見るに見かねた妹に、男性対象の家事学校へ行くように言われて…。離婚を引きずる主人公が、後向きな気持ちで始めた家事学校が、思いの外楽しくなる過程がよい。
面白いのが「家事に正解不正解はない」ところだ。例えばわが家の夕食でご飯を炊く時「明日の朝ごはんも含めた量で炊こう」と考えても、予想外に子供達が食べ、明日の分は新たに炊かないとならない事がある。これは失敗ではないけど、じゃあ残りご飯はどうする?と。
これが仕事なら「業務に必要な書類は多めにコピーしておけばいいか」で、常に余分に印刷すれば済む。でも家事なら「残りご飯の処理」を考えるのも仕事のうちだ。常に炊き立てを余分に炊飯し続ければ、大量の余りご飯が発生する。これでは日常の家事は成り立たない。その現実に即した物語だなと思う。
物語には独身者に既婚者、様々な男性が登場し、家事を学ぶ動機もその必死さも違う。嫌々通うあまり先生に喰ってかかる者もいれば、淡々とスキルを磨く人も、中には学校の学びで配偶者にマウントをとる者もいる…。主人公でなくとも、自身の人生を振り返り「あの時ああしていれば…」と思いたくなる要素が家事にはあるなと感じた。


