
しゅう
@shuu62
2026年3月10日
硝子の塔の殺人
知念実希人
読み始めた
よし、本格ミステリ読むぞ!と手に取ったのは名前だけは知ってる知念実希人の「硝子の塔の殺人」。
知念実希人といえば医療ミステリらしいので、こちらも医療ミステリ系なのか、それともタイトルと表紙的にはファンタジックな印象もあり、なかなか想像もつかない。
とにかく読んでみる事にする。
以降読書ログは会話部分に。






しゅう
@shuu62
(ネタバレ有)
200ページほど読む。
古典的な舞台設定にテンションが上がる。
倒叙ミステリかと思いきや、新しい犯行があり目新しさを感じる展開になっている。
本筋としてはもう一人の犯人を探すフーダニットと、神津島が発表しようとしていた未公開のミステリとは一体なんなのかという2つを軸に進んでいきそうだ。
ミステリマニアの心をくすぐる「名探偵」月夜と刑事である事に圧倒的な自負心を持つ加々見など個性豊かな登場人物も多くて楽しい。
ただ随所にメタ的なセリフや地の文も見られ、この世界観がミステリである事を強く認識させられている所に、何かこの作品全体の仕掛けがありそうな気がしてならない。
今後の展開が楽しみだ。

しゅう
@shuu62
(ネタバレ有)
最終日になり、物語が核心に迫ってきた。
第一の殺人と第二第三の殺人は別人という事が分かっていたが、「名探偵」は単独犯説で推理してしまっていた。
わざとの可能性も無くはないと思うが、描写を見る限り可能性は低いだろう。
自分の推理が間違えた場合は「名探偵」を名乗らないと宣言し、さらに二人目の犯人まで目の前で死なせてしまった。
さすがに立ち直れないだろう。
そして物語の視点人物である遊馬はまだ容疑はかけられていないが、この作品の冒頭では自らの犯行がバレ、展望室に閉じ込められている事が明らかになっている。
という事は犯人について再推理がなされたはずだが、それは一体誰が行ったのだろうか?
「名探偵」である碧月夜がこの状態から再奮起し、もう一度皆の前で推理したのだろうか。
そして作中では「硝子館の殺人」、と一連の殺人事件は呼称されているが、本作品のタイトルは「硝子の塔の殺人」である。
これはまさか新たに「硝子の塔の殺人」が行われるという事なのだろうか?
謎はまだある。殺人事件自体の謎は解かれたが、度々出てくる階段の足音、遊馬が階段から突き落とされた事実などは未解決のままだ。
夢読はこの館に不吉な物がいると語っていた。こういう場合、夢読のキャラクター的に相手にされない場合が多いが、ミステリの場合こういうセリフこそ伏線になっていたりするものだ。
仮にもう一人謎の人物がいた場合、考えなくてはならないのが神津島の「私は綾辻行人になりたい」というセリフだ。
そう、今書いてて思ったのだが、今回の話は「迷路館の殺人」に似ている気がする。奇妙な館に集められ、館の主人が死に、執事も死ぬ。
そもそも「硝子館の殺人」というネーミングは館シリーズを想起させる。
そして、「迷路館の殺人」は主人が実は生きていたのだ…。
「十角館の殺人」と言えば叙述トリックだし、「水車館の殺人」は犯人が覆面を利用し別人になりすましていたし、「時計館の殺人」では密室と思われていた部屋がある仕掛けにより密室では無かった。
思い過ごしな気もするが、とんでもない謎に踏み込んだような気もする。
さらに言えばこの世界はミステリ小説の世界だと読者は強く意識させられているが、この件についても展開されていくのだろうか。
残り100ページほどだが解決しなければならない謎は山積みだ。

しゅう
@shuu62
(ネタバレ有)
読了。すごい。ミステリ愛に満ちあふれた作品だった。
知念実希人氏の医学に対する造詣、さらに過去のミステリに対する愛情の二重らせんがこの怪物作品を生み出したのだろう。
思い返せば数々の小さな違和感はあった。
硝子の塔の立体図を見た時、作為的に「名探偵」を自称する登場人物…数えればキリがないが、それらが全て綺麗に収束された。
ミステリを愛する者として、何か悔しさに近い脱力感がある。
それは過去のミステリ作品群という巨大な塊を礎に建てた「硝子の塔の殺人」という巨塔を見上げた感覚なのだ。
こういった作品を見上げることしか出来ない無力さが脱力感に繋がっているのかもしれない。
とにかくミステリ史に燦然と輝くであろう硝子製の金字塔、圧倒的な作品だった…。