
ゆかり|本を語るときに私の語ること
@yukarigram
2026年3月9日
遠い声、遠い部屋
トルーマン・カポーティ,
村上春樹
読み終わった
カポーティ『遠い声、遠い部屋』読了。
母親が死んでしまったジョエルは、13歳の誕生日に行方不明の父親から引き取りたいと手紙をもらう。浮き足立って南部の小さい街に越していくと、なんやら挙動不審な大人たちしかおらず、肝心の父親にはなかなか会わせてもらえない。心細いが気に入られないと居場所もなくなっちゃうし、という訳で、できるヤツアピールしながら可愛げもアピール。転校生的な努力で溶け込もうとがんばるが、やっぱ居心地悪いっす、でももうここしかないんだね、という話。
知らない土地に住む緊張、ましてやそれが自分の新しい家や家族となると自分のパーソナルスペースギリギリまで赤の他人が迫ってくるわけで、まぁまぁしんどい。そこを生き抜こうとするジョエルが迷い込む、南部の町や人々の不気味さが際立っていて、ある意味ホラー感もあるのだけれど、それはまさに13歳の少年の現実なんだろう。何も知らない場所に飛び込んだ時の、輪郭があいまいな世界が、あいまいなまま描かれている。
この作品はカポーティの自伝的小説らしい。それが本当なら、ジョエルはいつの日か成長してこの町を去っていく。子供から大人になりかけのあやふやな自己、それをとりまくあやふやな世界、そこにクイアな要素も相まって、ひたすらにほの暗く、妖艶な夢の中を漂うような作品なのでした。
