TKS1T "タタール人の砂漠" 2026年3月12日

TKS1T
@kdtks_509
2026年3月12日
タタール人の砂漠
タタール人の砂漠
ブッツァーティ,
ディーノ・ブッツァーティ,
脇功
若き将校ドローゴの人生を通して描かれる"男"の一生の物語。決して英雄的でも劇的でもないが、若い頃に「これから何かが起こるはずだ」と期待する感覚は、多くの人が共感できるものだと思う。休暇で街へ出て何かを期待して過ごすものの、結局何も起こらず帰ってくる感覚などはとてもリアル。 この物語は一見すると「行動を起こさなければ人生は無為に過ぎてしまう」という教訓を孕んでいるようにも見える。ただ、実際にはそんな単純な話でもなく、人は環境や期待、習慣に縛られながら、少しずつ同じ場所に留まり続けてしまう。その静かな停滞こそが、この作品の本質のように感じた。 あとがきにも触れられているが、章ごとの時間の進み方が人生の体感時間を表している構成が見事だと思った。若い頃は細かく時間が描かれるのに対し、年齢を重ねるほど時間が圧縮されていく。 ラストは悲しいというよりやるせない。結局ドローゴの人生は大きな出来事を迎えることなく終わっていく。しかし最後の瞬間、彼は自分なりに姿勢を正し、死を受け入れようとする。その小さな覚悟が、せめてもの有終の美のようにも感じられた。人生とはそういうものなのかもしれないし、そうはなりたくないとも思う。
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