
読書日和
@miou-books
2026年3月13日
聞書 戦前の暮らし方
三橋正枝,
古川柳蔵
読み終わった
食事、住まい、仕事、道具、遊び、知恵、人間関係――
90年前、日本人はどんな暮らしをしていたのか。
1914〜36年生まれ、600人以上の証言から編まれた一冊。
もともとは戦前の暮らしを体験した人、つまり1941年頃に20歳以上だった世代(1920年頃以前の生まれ)への聞き取りが中心だったそうだけれど、対象を少し広げてまとめられている。
ちょうど私の母方の祖父母、父方の祖父がドンピシャの世代。
でも、生きている間にこの時代の話を聞くことはほとんどなかった。
特に祖父たちは戦争前後の話を避けていたので、子どもながらに気を遣ってしまい、昔の話は聞きにくかった記憶がある。
読んでみると、想像していた昭和初期の暮らしとは少し違っていて面白い。
ドラマ『おしん』などの影響で、昔の人は「辛くてひもじい生活」をしていたのだろうと勝手に思い込んでいたけれど、実際には食の種類も意外と豊富で、季節ごとの味わい方を楽しんでいたことがわかる。
子どものおやつは「山の中」。
山で遊びながら空腹を満たし、食べごろの木の実や草をみんな知っていた。
しかもそのまま食べるだけでなく、ちょっとした工夫でおいしく食べていたらしい。
お風呂の入り方も、町と村で違っていた。
そもそも毎日入るものではなかったようで、
食事に油が少ないからそこまで必要なかったのかもしれない。
町では銭湯に行くことが多く、
村では「もらい風呂」という仕組みがあったという。
移動は基本、徒歩。
子どもは10km、大人は30kmが行動範囲。
夜は提灯を持って歩く。
今のように街灯のある道ではなく、
星や月の明かりを頼りに歩く夜道はどんな気持ちだったのだろう。
自転車もまだ広く普及しておらず、本家に一台という家も多かったという。
(ちょっと『トトロ』の世界)
昔からの言い伝えも印象に残る。
「他人から後ろ指をさされるようなことはするな」
「ものを粗末にするな」
「何事も丁寧に」
制約の多い生活の中でも、
食事やものづくりを楽しみ、自然に寄り添って暮らしていた。
ただただ大変だったというわけでもなく、
かといって過度に美化されているわけでもない。
祖父母はこんな生活をしていたのだろうな、と
少し想像する時間になった。
この本を借りてきたことを家族LINEで父母(どちらも戦後生まれ)に伝えたら、
少しずつ昔の話を共有してくれた。
一世代違うだけでもこんなに体験が違うのかと、あらためて驚く。
二世代前の戦前世代とは、まったく違う暮らしがあったのだと思う。

