
amy
@note_1581
2025年3月15日

信仰
村田沙耶香
かつて読んだ
感想
何かを”信じること”についての小説とエッセイを8篇収録した本。村田さんの小説らしく “正常”と“異常”の境界がぼやけてしまう危うさ。この危うさが蔓延っているのが現実なのだという容赦のなさを突きつけてくる
自分のなかにある価値観や信念を捉えきれないまま、世間でいうところの”正しさ”に思考停止で乗っかってしまうことは、時には誰かをたやすく排除し自分がどう生きたいのかすら見失う
どの作品も好きだけれど村田さんのエッセイ「気持ちよさという罪」が個人的には一番好き
”多様性”が内包する意味や現状、歴史をよくわからないままに”多様性”という言葉を使っているだけで、自分は自動的に正しい側の人間になれる。実際のマイノリティ属性の人たちが直面していることへの解像度が浅いまま、この言葉を使う気持ちよさに流されてしまっていて、”なんちゃって多様性尊重”をしてしまっている人が存在するし、私もそういう一面があるかもしれないことを噛みしめる内容だった
こういう雑な多様性解釈への批判をしたかったのが朝井リョウの「正欲」なんだろうけど、そちらはあまり上手くいっていないようだった
