
makicoo
@makicoo
この本は悲痛と憂苦を乗り越えて心が浄化された忍耐強い高貴な文豪の文学遺産であり、同じような苦難に耐え忍ぶ後世の人々に滋味溢れる道徳上の格言、己に降りかかる様々な人生の試練、そして、それに立ち向かうべき方法をめぐり、流麗な筆致で単純な道理を説いたものである。不幸な境遇にいる人であれば、この本を後生大事に胸に抱きかかえるか、もしくは善良な王ジェイムズのように、夜ごと枕元に置いて心の糧にするであろう。 彼は本を閉じると、そこに綴られた言葉を心のなかで繰り返し唱えた。そして次第に瞑想を深め、移ろう運命、波瀾万丈の人生、若い頃に被った災難などの辛いことについて思いをめぐらせた。それは突然のことだった。朝の礼拝を告げる教会の鐘の音が彼の耳を衝いたのだ。その音は憂鬱な妄想と調和し、何か自分に関わることについてしたためよ、と勧める声のように聞こえた。そこで、彼は詩の武者修行よろしく、この不思議な響きに応えようと決意すると筆を取り、神に祝福を願い求めようと十字を切って詩の世界へと足を踏み入れたのである。こうしたことすべてに、どこか空想的な要素が強く感じられるが、ときとして詩想が連鎖の如く呼び覚まされ、詩作が精神に暗示される著しくも単純な方法の麗しい実例を提供するものとして興味深い。