カササギ "わたしたちの不完全な人生へ" 2026年3月14日

わたしたちの不完全な人生へ
わたしたちの不完全な人生へ
ヴェロニク・オヴァルデ,
村松潔
Illustration by Makiko Tanoue Design by Shinchosha Book Design Division 書評「不完全な人々の静かな共助」 津村記久子 (つむら・きくこ 作家) 「波」2026年1月号 p.23 崩壊するときも、成熟し開花するときも、人は物事がじわじわ進むのを好まない。 p.27-28 その日、彼女はバスの前方で身動きできなくなり、すぐ目の前に運転手のうなじが見えた。…もっと奥へ詰めたらどうなんだ、くそ、と文句を言う声が聞こえた。彼らはみんな(彼女を含めて)ほかの人間の生活のなかでは背景にすぎない登場人物なのだろう。端役なのだ。映画の初めのほうで殺されたり、溶岩流に呑みこまれてしまう人たち。けれども、彼らだって自分の人生では中心にいて、自分で下げ振り〔錘をつけた糸で垂直を調べる道具〕を垂らしているのだ。ところが、こんなに狭い空間にこんなに下げ振りが密集しているのは尋常ではなく、下手をすれば、爆発しかねなかった。人々の頭上に吹き出しが浮かんでいて、だれもが“わたしはわたしの人生の最重要人物なんだぞ”と言っているような気がした。 p.130 もしも自分の人生が手に汗をにぎるようなものならば、それについて書いたりしていないで、それを生きればいいのだし、だれかほかの人がそれについて物語ることになるだろう。 *…*…* 読み進めていくと次はどの登場人物に出会えるのだろうと、お気に入りの人物を心に留めておきたくなる 読み終えて、また最初に戻ってもう一度読みたくなる また出会いたいと思う登場人物の多い連作短編集 第二外国語にフランス語を選んだ友人に薦めたい一冊。
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