
活字畑でつかまえて
@catcher-in-the-eye
2026年3月16日

傑作。
鼠3部作の2作目.
おそらく初読から20年以上ぶりの再読。
「風の歌を聴け」はけっこう覚えていたけど
今作の内容はほぼ忘れていた。
『風の歌を聴け』と比べると情感があり
より人間味が出てきたぶん
親しみがある。
「高い窓からルーベンスの絵のように差しこんだ日の光が、テーブルのまん中にくっきりと明と暗の境界線を引いている。テーブルに置いた僕の右手は光の中に、そして左手は翳の中にあった。」
あまりにも素晴らしすぎる文章。
これだけで100点。
「何もかもが同じことの繰り返しにすぎない、そんな気がした。限りのないデジャ•ヴュ、繰り返すたびに悪くなっていく。」
これもまた素晴らしい。
その後の村上作品で重要なモチーフとなる「井戸」が出てくる。すべてはここからか。
電車に轢かれ何千という肉片となった井戸掘り職人。
そして直子という名のガールフレンド。
鼠が大学を辞めた理由もいいな。
「中庭の芝生の刈り方が気に入らなかったんだ」
「お互い好きになれなかったんだ。俺の方も大学の方ももね」
「良い質問にはいつも答がない。」
鼠の孤独がただただ痛ましいまでに切ない。
でも他人に簡単に分かられてたまるかという孤独だ。一人で抱え込むしかない。
そしてジェイ。
実は彼がいちばん孤独なんじゃないか、と思う。
双子は一体なんだったんだろうな。
工業製品のようだし
未来の世界の猫型ロボットのようだ。
死んでるような気もする。
「僕」がゴミ捨て場から拾ってきた人形。
それにしても傑作。
それは間違いない。
作中で〈僕〉が読んでいた本
カント「純粋理性批判」
以上。