活字畑でつかまえて "1973年のピンボール (講..." 2026年3月16日

1973年のピンボール (講談社文庫 む 6-2)
傑作。 鼠3部作の2作目. おそらく初読から20年以上ぶりの再読。 「風の歌を聴け」はけっこう覚えていたけど 今作の内容はほぼ忘れていた。 『風の歌を聴け』と比べると情感があり より人間味が出てきたぶん 親しみがある。 「高い窓からルーベンスの絵のように差しこんだ日の光が、テーブルのまん中にくっきりと明と暗の境界線を引いている。テーブルに置いた僕の右手は光の中に、そして左手は翳の中にあった。」 あまりにも素晴らしすぎる文章。 これだけで100点。 「何もかもが同じことの繰り返しにすぎない、そんな気がした。限りのないデジャ•ヴュ、繰り返すたびに悪くなっていく。」 これもまた素晴らしい。 その後の村上作品で重要なモチーフとなる「井戸」が出てくる。すべてはここからか。 電車に轢かれ何千という肉片となった井戸掘り職人。 そして直子という名のガールフレンド。 鼠が大学を辞めた理由もいいな。 「中庭の芝生の刈り方が気に入らなかったんだ」 「お互い好きになれなかったんだ。俺の方も大学の方ももね」 「良い質問にはいつも答がない。」 鼠の孤独がただただ痛ましいまでに切ない。 でも他人に簡単に分かられてたまるかという孤独だ。一人で抱え込むしかない。 そしてジェイ。 実は彼がいちばん孤独なんじゃないか、と思う。 双子は一体なんだったんだろうな。 工業製品のようだし 未来の世界の猫型ロボットのようだ。 死んでるような気もする。 「僕」がゴミ捨て場から拾ってきた人形。 それにしても傑作。 それは間違いない。 作中で〈僕〉が読んでいた本 カント「純粋理性批判」 以上。
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