torajiro "時の家" 2026年3月14日

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2026年3月14日
時の家
時の家
鳥山まこと
第174回芥川賞、第47回野間文芸新人賞受賞作。 ひとつの家を舞台に、そこを建て暮らした人、続く家主の人たちの暮らしと家の関係が紡がれる静謐な文章。家の視点というか俯瞰的で、時系列も折り重なって描写されていく文章に独特の味わいがあってよかった。ひとつの家とそこで暮らす人の歴史が描かれていくという点で、子どもの頃から大好きな絵本『ちいさいおうち』を想起した。あの絵本を純文学にした感じというか。いや、そういうと違うか。 町を歩いていて空き家を眺めながら「ここにはかつてどんな人たちがどんな暮らしをしていたんだろう」とか、駅とかで無数の人とすれ違いながら「みんなそれぞれに帰る場所や暮らしがあるんだなぁ」などと、当たり前なんだけど、どこか切なくて途方もない感覚を、思えばちいさい頃から感じてきたのだけど、この作品はそうした感覚を研ぎ澄ませて形にされているような感覚がある。そうした想起が、壁や柱やタイルや天井やそこに刻まれた傷なんかから始まっていくという感覚も、わかる。 『時の家』というタイトルについては、読みながらどちらかというと『家の時』ではないのかな、と感じていたんだけど、代々の家主たち自身の人生の流れや、終盤に描かれる藪さんの家に込めた思いに触れて「あぁ、やはりこれは『時の家』の話なんだな」と納得した。面白かったです。
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