
DN/HP
@DN_HP
2023年2月12日

すべての、白いものたちの
ハン・ガン,
斎藤真理子
かつて読んだ
心に残る一節
読書日記
SNSでみかけたこの本に添えられていた言葉がとても素敵だった。雪の日にそんなきっかけで手に取った本を改めて開いたのは快晴で暖かい日の午後で、そんなタイミングもちょっと良いなと思った。
冬に雪、私と彼女、命と死。静かに深くなっていく美しい文章、なめらかな翻訳。そこには寂しさや哀しさに寒さがあるのだけど、少しづつ体温のようなぬくもりも感じていた。白いものたちの小さい話。小説。
移動中に幾つも付箋を立てる。落ち着いて何回も読み返したいセンテンス。ああ、これはずっと読み続ける本になるかもしれないし、もしかしたら冬が来るたびに開くことになるのかもしれない。とそんなことも思った。
本を閉じて歩き出しながら、父親の死んだ日のことを思い出していた。看取ったあとに入院していた病院を出て、道を挟んだ向かいにあるコンビニの喫煙所で空を見上げると、その日もとても晴れていて。タバコに火をつけると、白い煙が青い空の方に登っていった。それを見ながら父親の死を少しづつ実感していた。そのときの喫煙所はもうないのだけど、たまにその道を通るとその日のことと父親のことを思い出していた。これからはこの本を開くときにも、そのことを思い出すことになるかもしれない。その日の話は前にも少し書き出したことがあるのだけど、もし改めて書くとしたら、数年後に読んだこの本の話も加えて“目録”にならった「けむり」というタイトルをつけてみたいと思う。
「古い苦痛はまだすっかり収束しておらず、新たな苦痛はまだ始まってもいない。日々は完全な光にも完全な闇にもなれずに、過去の記憶に揺さぶられている。反芻できないのは未来の記憶だけだ。」
雪の日に素敵な言葉をきっかけに手に取ったことや読み始めたタイミングにそこから思い出したこと。そこにもSNSでの言葉を使わせて貰うなら「祝福」と言っても良い何かがあったような気もしています。


