
しんどうこころ
@and_gt_pf
2026年3月15日
原因
トーマス・ベルンハルト,
今井敦
読み終わった
『ある子供』に続くベルンハルト自伝二作目。
一作目の茶目っ気は一切排除され、ここからが本当の始まりだと感じさせるような激流に飲み込まれる。
圧倒的な美しさで世界から讃えられるオーストリア、ザルツブルクへの容赦ない罵倒。
セリーヌの暑苦しく肉体的な憤怒とは違い、ベルンハルトの怒りは氷のように精神的だ。
それは文学に改行すら許さず、延々と続いていくのである。
ふと、精神と環境の因果について考えさせられる。
戦時下オーストリアという環境、そして彼を取り巻く特殊な家庭環境が彼を生んだのか。はたまた彼の精神が、怒れる環境を作り上げたのか。
ベルンハルトは言う。
政府は人々に蒙(もう)を啓(ひら)かない。なぜなら白痴を生産し、飼い慣らすことで彼らは生きながらえてきたからである。
おそらく当時は戦争という混乱に乗じて社会が腐っていたのであろう。だがここで読み手であるわたしの生きる現代を見回すとどうだ。
いつの時代も社会はどこかで狂っている。
それはすなわち、社会が存続するために支払わされる代償なのではなかろうか。


