
小石川
@mkgaogao
2026年3月15日
風の歌を聴け
村上春樹
読み終わった
@ 自宅
26/09
鼠が女の子に会ってほしいと頼んだあとに、僕がクローゼットの中からいちばん「まとも」な服装を選んで車で街をまわるパートがあって、そこに「川口近くで車を降りて川で足を冷や」すシーンがある。これと、それに続く街についての話を読むたび、数年前に神戸の塩谷と夙川に行ったときのことを思い出す。
何もかも全て嫌になってきていた時期で、そんななかとある友人に神戸にいるからと誘われて行ったのだ。ヤナーチェクのシンフォニエッタを聴いたり、朝早くに瀬戸内海の穏やかな海辺を散歩したり、本棚を見せてもらったり、実に不思議で素敵な体験をいくつもしたのだが、そのときに夙川河川敷を川口まで歩いた。その川口のことをこの話を読むたびにいつも思い出す。
自分はとても気の利いたことなど言えるようなまともな状態ではなく、友だちだというのも憚られるような人だったように思い出されるのだけど、あくまでも自分側からこの思い出を振り返ると、あの時のことはこれから先もずっと、この小説と一緒に覚えているだろうなと思うくらいとても救われたし、とても素敵な思い出だ。
余談だけれどそのとき、この小説に出てくる猿の檻がある公園のモデルらしき場所にも行った。残念ながら猿はおらず、遊具に二人で腰掛けて取り止めもない話をした記憶がある。
こういうことがこれから先もあればいいなと思うけれど、そう思っていればやってくるものでもないなとも思う。
その友人は今も元気そうで、ときどき絵を描いて過ごしている。
村上春樹の小説を読むと、孤独になんとか立ち向かい、自分の信じるものを貫き通すための緩やかな活力を見出すことができるところが、16歳のときに初めて読んでから33歳になった今でも変わらず好きだ。
隣で温かい猫が寝ている時に読み終えた。



