しんどうこころ "黄金仮面の王" 2026年3月16日

黄金仮面の王
黄金仮面の王
マルセル・シュオッブ,
垂野創一郎,
多田智満子,
大濱甫,
西崎憲
子供は蟻を笑いながら踏み潰す。ここに悪意はない。無垢なのである。 無垢や純粋は決して救いではない。 また、世界は期待するほど暖かくない。むしろ時に、氷のように冷たくなる。 しかしそれもまた、罪でも悪でもない。 だが世界はどこか静かに美しい。 夢のように、幻想的に。 シュオッブはその世界を描く。 シュオッブの文体からは、神話のようなこぎみよい力強さと、心が漂うような幻想とが同時に感じられる。この二つが独特のリズムを生み出しているのだろう。 ときに物語はぐいぐいと前進し、ときに目が泳ぐような浮遊感を醸す。 相反するとも言えるこの感覚の交錯が、シュオッブの文学をより強く読者に訴えかけるものにしている。 そしてこの美しく純粋な情景が、突如として崩壊する。そこに悪意はなく、罪もなく、むしろその純粋さが生んだ破滅とも言える。 これは下手なホラー作品よりもよほど恐ろしい。美しさは、不気味なほどに恐怖を際立たせるのだ。 本書でわたしは「木の星」と「顔無し」が特に気に入った。 シュオッブの世界に、まさに身体の芯から浸れる作品なのではないだろうか。
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