MOCHI
@our_sum_mer
2026年3月17日

熟柿 (角川書店単行本)
佐藤正午
読み終わった
ウワァ〜〜〜〜良い小説だった...............................
の余韻がすごい。
先が気になって一気に読み進めたけど、クライマックスは腰を据えてじっくりと、その空気を一緒に噛み締めながら文字を追った。
激情の描写じゃないもどかしさが素晴らしかった...本を閉じて、表紙を眺めて、じんわりと目じりに涙がたまってきた。なんて良い小説を読んだのだろうという気持ちで、しばらく胸が震えていた。
「読書」の時間経過だからこそ、味わい深さが増幅する物語だった。
前半、主人公が一瞬一瞬の選択を誤り、じわじわ良からぬ方向へ進んでゆき、ぐにゃりと歪んだ光景が迫ってくるような感覚が、今村夏子の小説を読んでいる時に感じる不安さや憂鬱さみたいだったけど、後半につれて自分の運命を受け入れ、ひたむきに生きる姿にその影はなくなっていた。これも意図的な書き分けのグラデーションなのかな。
展開はかなり重たくて、絶望とイライラの積み重ねなのに、ほんの少しおかしみを挟んでくるのが絶妙で(け?とかタクアンとか何)、あとは男性が描いてる感が全然ない筆致も、佐藤正午さんが持つエッセンスの豊かさに唸りながら読んだ。
長い年月をかけて土地も移り変わり〜な物語は読んでいて混乱しがち人間だけど、繋がりがわからなくなるとか、ある人物は忘れてしまうとかも一切なく、ストレスを感じずスムーズな読書ができるのも地味にすごい〜と思う。
主人公が時間と経験をかけて得た思慮深さと、何が起きても西へ西へ、ひたすら生き進む強さと、救い寄り添う登場人物たちも、それぞれの人間味に惹きつけられて、まだ読みたい知りたいと思わせる余韻がとても好きだった。
文芸誌の野性時代での連載だったそうだけど、本の雑誌の紹介にて「年に1回の連載だった」という情報を見て頭の中に宇宙ネコが広がった(途中から連載形態は変わったようですが)。
8年の時間をかけてこんなにも素晴らしい小説が書けるなんて本当にどういうこと。すべてがタイトルとぴったりだ。
次は、数年前めちゃくちゃ面白く読んでたのに下巻に手をつけそびれて放置してしまった「鳩の撃退法」を、再び上巻から読もうと思います!
