@s_ota92
2026年3月17日
詩的私的ジャック
森博嗣
p15
「犀川の腕時計が示す時刻は、一時三分まえだった。つまり、それは日本標準時がその時刻であることを意味する。」
p19
「「衣・食・住の三つのうち、食はちょっと特別だけど、衣と住は、どう区別できる?答えられる人はいますか?」」
p21
「「そう、そのとおりです。しかし、それがろくでもないという意味です。」」
p24
「このように、大切なことを一瞬で忘れてしまえるというのが、一般に言う「年の功」だろう、と犀川は最近気がついていた。」
p26
「けれど、「特別」と表現したニュアンスも、最近では幾分、複雑になりつつある、と犀川は感じている。」
p32
「「しかたがありません。熱って、勝手に上がるんですから……。私のせいじゃないもの。」」
p33
「そういった「影の仕事人」と呼ぶべき勤勉な印鑑が日本には沢山ある。」
p48
「もっと早く、先生と知り合っていたら良かった、と彼は言った。その言葉が妙にひっかかる。」
p54
「「一番のポイントはね、何のためにそんな密室を作ったかだ。Howよりも、Whyだ。」」
p65
「「詩はいいだろ……。奴は音楽なんかじゃなくて、詩人になるべきだったと思うよ。」」
p66
「「ふ……、あるわけがない。ハートなんて、出尽くしてる。ミステリィのトリックと同じだね。実際にあるのは、メソッドの形骸だけだ。」」
p67
「魅力的でもあるが恐怖でもある。まるでカメレオンの球形の眼か、新しい口紅のカラーみたいに……。」
p72
「「学ぶのは、それこそ、平等になるためだよ。」」
p86
「自分たちはどう見えるだろう、と犀川は思った。」
p92
「これで、彼女のメータは五アンペアほど跳ね上がった。」
p103
「協調という概念が、彼女には、妥協あるいは不純と同義なのだ。」
p113
「「勉強すれば沢山あることがわかるよ。わかっていないことばっかりなんだ。ただ、みんな、不思議を逃しているだけだよ。」」
p128
「「悪い……。あんたには意味のない質問でした。」」
p137
「空気は無謀な回転運動を繰り返す。レイノルズ数が一桁下がったようだ。」
p146
「(私も大学院に行こうかな……。)と、突然、彼女は考えた。」
p149
「暗いことは、むしろ二次元的な要素で、光が少ないことは問題ではない。光は電波であり、人間の感覚はただのアンテナだ。電波は磁気の振動であり、振動は、電子の回転運動の結果に過ぎない。」
p150
「あの完璧な単純さほど、恐ろしいものは、この世にない。理解することへの畏怖、そして、理解したときの戦慄。」
p167
「一昨年の妃真加島のこと、昨年の極地研のこと、そして、三重県の三ツ星館のこと。」
p179
「「じゃあ中国まで行ったら。」」
p193
「質問をする場合、一般に、質問者側のレベルが問われることを、彼女は犀川から何度も聞かされていた。」
p198
「お互いを尊重することが自由という意味だから、住み分けは歯切れが良い。」
p203
「「物騒だから気をつけて。君みたいな子が、一番危ないんだよ。」」
p222
「萌絵の質問に、篠崎の瞳が初めて変化した。彼は初めて自分から視線を逸らした。」
p243
「もう、自分の目に溜まっているものは、ただの水と同じだった。呼吸を整え、思考を開始する。」
p256
「こういう相手には、意味のないことを言うに限る。それは、犀川から伝授されたテクニックで、ジョークの燕返しと呼ばれている。」
p258
「萌絵は、犀川に会いたかった。それは、会いたいと思っている自分がいる、という意味だ。」
p260
「コーヒーは程よく冷めていて、猫舌の彼女には最適温度だった。子供の頃は、大人になったら熱いものが飲めるようになると信じていたのに、その期待は裏切られた。それとも、自分はまだ子供なのだろうか……。」
p273
「「いや、余計なお世話、というのはね……、そういう意味じゃなくてね……。」犀川はそこまで言って、やめてしまった。余計なお世話だからだ。」
p297
「二人のうちどちらかが飛行機に乗るときには、必ずもう一人が空港までの送り迎えをする、というのが、この二人の絆のようである。」
p300
「「有能な人間は、周りがそのままにしておかないだろ?みんなで一緒に無能になろうとしているんだ。そうやって社会のエントロピィが増大するわけ。」」
p301
「それは、彼女自身が、犀川や喜多から、まだずっと遠い距離にいる証拠だ、と思えた。ちょうど、地球から見た星のように。」
p303
「「そうそう、大学の中に陶器でできた狛犬が置いてあったね。その口の中にいっぱいゴミが捨てられていて、それが面白かったよ。あれはライオンかもしれないな。」」
p307
「「言葉はね、言い方や、言い回しじゃない。内容はちゃんと伝えないとね。それが、言葉の役目だから。」」
p307
「「西之園君、底なし沼と普通の沼はどう違う?」」
p308
「「ようは、人間の幻想の有無なんだ。」」
p326
「ずっと、萌絵が自分の影響を受けていると思っていたが、どうも、だんだん萌絵の影響を受けている自分を発見する機会が多くなっていた。」
p352
「「マイナスルート2を忘れているよ。」」
p358
「「超天才じゃない!」」
p362
「二人は、数字の11よりも接近した。」
p365
「「相手の思考を楽観的に期待している状況……、これを、甘えている、というんだ。いいかい、気持ちなんて伝わらない。伝えたいものは言葉で言いなさい。それが、どんなに難しくても、それ以外に方法はない。」」
p374
「人々は、皆、電光掲示板と同一のメカニズムで動いている。どこか見えないところからくる信号で光っているだけだ。」
p376
「「さようなら、先生。」」
p380
「こうして、自分のアイデンティティは、素直な思考によって不可逆的に軟弱になっていく。」
p391
「その曲は、『Jack the Poetical Private』だ。」
p396
「海は夜と同じくらい黒い。空気は夜と同じくらい動かない。」
p403
「「酸化するというよりは、錆びるといった方がずいぶんロマンチックだろう?」」
p407
「「話しますから、しばらく、質問しないで下さい。残念ながら、言葉は思考のようにランダムではない。順序立てて、シーケンシャルにしか話せませんからね。」」
p427
「「もし、西之園君の足がもう少し大きかったら、この事件は解決していなかったでしょう。これは、気が利いている。うん、クレオパトラみたいだ。」」
p436
「「あの人は、汚れたものが嫌いなんだ。純粋で、学問が好きで、高尚で、完璧な人なんだ。傷があったら、腕ごと切り落とすような人なんだ。」」
p440
「すべて、素敵なイーコールのために……。」
p441
「人間は、クリスタルではない。」
p443
「「夢と希望はどこが違う?」」
p459
「「もう一つは、絶対、私以外の人と結婚しないで下さい。」」
p461
「ものを数えるのは楽しい。その時間だけ、過去も未来も順番に、行儀良く並ぶからだ。」
p461
「(たった今、君が突然言い出した、押し付けがましいお願いが、希望で……、僕がそれを断った、言葉では説明できない曖昧な理由……、それが夢だ。)」